1990年代の絵画表現のおおまかな特徴として、異種混交性が重要な要素のひとつだと考えられる。それは作者の人種、背景の多様化、それに伴う主題の多様化、さらには絵画を他のメディアと組み合わせるなどして、絵画のみでは成立させないような作品のあり方によって規定される。90年代の動向はまだ歴史化の端緒についたばかりで、しばしば「なんでもあり」の状況を招いた時代とも言われることもあるが、こうした近過去の言説の整理や、作品分析をつうじて、現代における絵画の批評的意義に関する一視座を提示することができたと考える。今後も研究を続けることで、美術史およびわたしたちの美術への考え方を深めることに貢献したいと考える。
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