研究課題/領域番号 |
19K13022
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山本 美希 筑波大学, 芸術系, 助教 (90783770)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 文字のないページ / 文字なし絵本 / サイレントマンガ |
研究実績の概要 |
申請時に投稿していた論文「物語絵本における文字のないページの有効性」が刊行され、2019年度には、そのデータをもとにした登録作業と分析を進めた。国立国会図書館国際子ども図書館での調査や大学図書館での調査を行い、該当箇所を複写するまたは借り出して資料を整理した。文字のないページがどのような場面で見られるか、絵本を読みながら内容をチェックシートで記録し、それをデータとしてPCに登録した。今年度は、クライマックスにおいて文字のないページのある絵本をおよそ130冊、冒頭で文字のないページがある絵本35冊の調査を終えた。また、言葉を用いないページの見られる作品を新たに30作ほど発見したが、それらは随時タイトルを控え、今後調査する必要のあるリストとしてまとめた。 これらのデータを分析するにあたり、サイレントマンガの研究者との情報交換を行った。そこで、言葉を用いないで表現することを理論化するための意見を聞くことができた。またサイレントマンガに関する先行研究や資料を新たに入手し、文字のないページにおいてもその研究を援用できないか検討している。 そのほか、文字なし絵本の著作があるアメリカの絵本作家クリス・ラシュカの作品を調査し、『絵本BOOK END2019』に記事を執筆した。また、文字なし絵本『ライオンとねずみ』の編集を担当したアメリカの出版社のアート・ディレクターへのインタビューも行った。カナダのケベック州で5月に行われるモントリオール・コミック・アート・フェスティバルにて、現地の作家5名とサイレントマンガを競作し展示した。この企画において文字のない表現ができる作家との繋がりを増やすことができたため、最終年度に行うワークショップの講師候補として検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点までに図書館での調査を行い、大学院生の助力を得ながら、文字のないページがどのような場面で見られるか、チェックシートで記録させる作業を進めた。現時点でクライマックスにおいて文字のないページのある絵本130冊程度、冒頭で文字のないページがある絵本35冊程度の調査を終えている。データ化については予定通り進んでいる状況である。また分析に際しての関連する分野の情報も得ることができており、概ね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はデータの分析と理論化に重点を置いて研究を進め、タイプ別に表現の作用を考察してゆく。海外の絵本研究者とのコネクションを生かし、情報収集・意見交換も行いながら研究を進め、口頭発表や研究会での成果報告を行う。得られた研究成果は論文にまとめ絵本学会、IRCL(International Research in Children’s Literature)に投稿する。 また、指針ハンドブックの作成にも着手する予定である。研究成果を実践的な制作へ応用するために、文字のないページが果たす役割とそれを絵本作家が効果的に活用するための指針を構築する。最終的には簡易でわかりやすい作家向けのハンドブックとしてまとめ、最終年度に行うワークショップで活用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
意見交換を行ったサイレントマンガの研究者Barbara Postema氏の所属先が、カナダからニュージーランドの大学へ移動したため、渡航費に差額が生じた。また、国際学会への参加を予定していたが、新たにイタリアに文字なし絵本を収集している図書館があるとの情報を得て、調査のための渡航に振り替えることを検討しているため、この費用も未使用となった。2020年度に渡航する予定でいたが、新型コロナウイルス等の状況に鑑みて、時期については改めて検討する。調査に使用するPCは今年度に購入予定。
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