研究課題/領域番号 |
19K13022
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山本 美希 筑波大学, 芸術系, 准教授 (90783770)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 絵本表現 / 文字なし絵本 / 文字のないページ / 絵本学 / 物語表現 / 視覚文化 / ナラティブ |
研究実績の概要 |
昨年度に続き、これまでに発見した文字のないページの見られる絵本のデータ登録作業を進め、「最後で文字が抜ける」グループと「重要な事物・状況を紹介する」グループ合わせて約500冊の作業が完了した。今年度新しく発見した絵本については別のリストとしてまとめている。2020年度は言葉のない絵本を収集しているイタリアの図書館の訪問を予定していたが、COVID-19パンデミックにより次年度以降へ延期とした。また、他の研究者との意見交換の場としていた研究会や学会の大会が中止となり、また学内のオンライン対応にも追われたことから、予定通りに研究を進展させることはできなかった。現在は新たに絵本界におけるコロナ禍への対応を調査し、このウイルスをテーマとして刊行された作品の収集・分析も行っている。 そのほか、COVID-19をテーマとしたマンガ企画にて、4カ国から参加した漫画家の一人として、言葉を用いないマンガ(サイレントマンガ)8ページを制作した。本研究課題の中心である「文字を用いない表現手法」が、言語や地域の垣根を越え世界中の作家と読者を結びつけるものとして活用された事例であり、関連分野の作品として分析する(5月公開予定)。今後、4カ国の作家たちに文字のない表現の効果についてヒアリングすることを検討しており、今後の研究へ発展させる手がかりとなった。共同制作という場における言葉を用いない表現の活用の可能性についても、今後さらに検討を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データ化の作業については予定通り行ったものの、COVID-19パンデミックにより海外の言葉のない絵本を収集している図書館の訪問ができなくなった。また、同様の理由で学内のオンライン授業対応などに予想外のエフォートを割くこととなり、分析も予定よりも遅れた状態である。国内学会の大会が中止となり、口頭発表ができなかったため、これらについては次年度以降へまわすことを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、データ化の作業が残りわずかであり、それらを進めながら、表現分析に取り組む。理論化を進め、特徴的な作例のピックアップなどを行い、論文執筆を行う。また本年度訪問できなかったイタリアの図書館や国際学会(IRCL)ヘの参加、研究会での口頭発表を実現できればと考えている。 第二に、同時にこれらの研究成果を実践的な制作へ応用するための、指針となるハンドブックの制作に着手し、研究成果を創作者へわかりやすく伝え、活用してもらうためのプロトタイプ制作を行う。複数の絵本関係者からの意見のヒアリングののち、最終年度のワークショップの予定や準備を本格化させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、予定していた海外渡航調査を実施できなかったため差額が生じたほか、図書館の利用や外出にも制限が生じ、一部の予定していた交通費や資料購入費用が未使用となった。また、調査への協力を依頼予定だった大学院生たちも大学への立ち入りの制限があり、予定通りの作業依頼ができなかったため人件費も未使用となった。
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