研究課題/領域番号 |
19K13031
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小林 瑠音 神戸大学, 国際文化学研究科, 学術研究員 (60825850)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 英国 / コミュニティ・アート / 文化政策 / 社会関与型の芸術 |
研究実績の概要 |
本研究は、社会関与型の芸術の中でも先駆的な事例である英国コミュニティ・アートの歴史的変遷と国際的影響について、文化政策の観点から再検討を行うことを目的とする。具体的には、芸術と社会の関係性、あるいは芸術と政策の攻防を如実に表してきた英国コミュニティ・アートの変遷と実態を捉える実証研究を推進する。本研究では特に以下の2つの課題、1)ロンドン以外の地域を含む現地調査の継続、2)英国外における人的連関の解明に取り組む。 第一の課題については、当時のコミュニティ・アートに関する他の重要拠点であった、エディンバラとバーミンガムについて、新たな調査に着手し、英国における文化政策の地方分権化について、その歴史的変遷を検証する。第二の課題である、英国外における人的連関については、既に代表者のこれまでの研究を通して、国際交流基金やブリティッシュ・カウンシル主導で日英間のコミュニティ・アートに関する強固な人的ネットワークが形成されてきたことを指摘した。本研究では新たに、1970年代より英国との間で密接な相互関係を維持してきた豪州の事例に着目し、現地に数多く現存する英国コミュニティ・アートに関する史料をもとに、これまで検証されてこなかった英豪間の通時的・共時的連関を解明する。 2019年度は、課題1)に関してはエディンバラとバーミンガム、課題2)に関しては豪州にて文献調査および聞き取り調査を行うことを予定していたが、一身上の都合により研究の続行が困難となり、補助事業期間の延長が承認された。当該年度の研究実績としては、去年度より進めていた共著が公刊および民間団体のウェブジャーナルへの寄稿と美術展のレビュー執筆を行ったが、新型コロナウィルスの影響により当初予定していた英国と豪州での現地調査および国内外の学会発表、博士論文の公刊準備等は次年度以降に延期となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度に関しては、一身上の都合により研究の続行が困難となり補助事業期間延長が認められたため、当初の研究計画に大幅な変更を加えた。さらに、新型コロナウィルスの影響で海外渡航や国内移動が不可となったため研究計画を修正せざるをえない状況になった。現在までの進捗としては、これまでの研究成果にもとづいた論考を2本公開(共著書籍とオンライン上の寄稿論考各1本)に加えて美術展のレビューを寄稿したが、当初予定していた研究計画の大半は次年度以降に延期している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に実施予定だった研究計画については、2020年度以降の実現を予定している。今後、本研究における2つの課題1)ロンドン以外の地域を含む現地調査の継続および2)英国外における人的連関の解明を本格的に進めていく。 具体的には、課題1)については、ロンドンのカムデン区での文献調査、エディンバラの「クレイグミラー・フェスティバル・ソサエティ」に関する資料収集と聞き取り調査、そしてバーミンガムで既に継続的に実施してきた「ジュビリー・アート」と「テルフォード・コミュニティ・アート」の当事者への聞き取りの続行を予定している。なぜ英国コミュニティ・アートの源泉がエディンバラで生まれたのか、なぜバーミンガムにてロンドン中心主義に対抗する独自の存在感が発揮されたのかについてさらなる調査を進める。 課題2)については、日本の事例に関する聞き取り調査および豪州での一次資料の収集にとりくむ。研究代表者は既に豪州にて予備的な資料調査に着手しており、ヴィクトリア州立図書館等を訪れ、英豪コミュニティ・アートの関係性を示す資料を入手している。その結果、既に1970年代からエディンバラやロンドンに拠点を置く英国コミュニティ・アートの実践家が豪州に移住し、現地で新たな活動を設立していた事例等が確認できた。引き続きこれらを紐解く一次史料の収集にあたりながら、豪州から渡英あるいは英国から来豪した実務家やアーティストの言動を追い、それらを後押しした外因的要素、すなわち中間支援組織や豪州アーツカウンシルの影響を検討する。 これらの成果を国内外の学会誌に投稿するとともに、博士論文の公刊に向けた執筆作業を進める。なお、コロナウィルスの影響で海外への渡航が引き続き困難となった場合には、オンライン上での聞き取り調査および既に入手している文献と資料の読み込みと整理を中心に実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:一身上の都合により補助事業期間の延長を申請したため。 使用計画:2019年度に実施予定だった研究計画については、2020年度以降の実現を予定している。今後、本研究における2つの課題1)ロンドン以外の地域を含む現地調査の継続および2)英国外における人的連関の解明を本格的に進めていく。 具体的に2020年度には、課題1)については、ロンドンのカムデン区での文献調査、エディンバラの「クレイグミラー・フェスティバル・ソサエティ」に関する資料収集と聞き取り調査、そしてバーミンガムで既に継続的に実施してきた「ジュビリー・アート」と「テルフォード・コミュニティ・アート」の当事者への聞き取りの続行を予定している。課題2)については、日本の事例に関する聞き取り調査および豪州での一次資料の収集にとりくむ。 同時に、これらの成果を国内外の学会誌に投稿するとともに、博士論文の公刊に向けた執筆作業を進める。なお、コロナウィルスの影響で海外への渡航が引き続き困難となった場合には、オンライン上での聞き取り調査および既に入手している文献と資料の読み込みと整理を中心に実施する予定である。
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