研究課題/領域番号 |
19K13032
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
筒井 宏樹 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (40707064)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 現代美術 / ミニマリズム / 美術批評 / 野外展示 / 野外彫刻 / スペース・プラン / アート・コレクティブ |
研究実績の概要 |
(1)鳥取というローカルな地域で1968年から1977年まで活動した前衛芸術家集団「スペース・プラン」について調査し、その成果は『スペース・プラン:鳥取の前衛芸術家集団1968-1977』(アートダイバー、2019)の刊行として結実した。中心メンバーである谷口俊、フナイタケヒコ、山田健朗に取材し、京都在住の美術家・福嶋敬恭との関係、そして具体美術協会という着想源を解明した。つまりスペース・プランが、60年代半ばにアメリカへ渡りミニマリズムの代表作家であるドナルド・ジャッドとも交流した鳥取出身の美術家・福嶋敬恭を通じて、アメリカの最新の美術動向であるミニマリズムをいち早く受容したこと、関西の前衛芸術家集団「具体美術協会」の拠点であるグタイピナコテカ(大阪)を訪問し、さらに美術雑誌を通じてその野外展示を知るなど具体美術協会をもう一つの着想源としていたことである。以上から、スペース・プランがアメリカのミニマリズムというグローバルなネットワークを形成しつつも、具体美術協会以来の野外展示という日本の文脈にも位置付けられることを明らかにした点が本研究の意義である。 (2)日本における野外彫刻展の歴史を検証した(「宇部の野外彫刻とまちづくり:上田芳江と土方定一の役割」『アートがひらく地域のこれから』ミネルヴァ書房、2020年)。野外展示の代表的事例である宇部の野外彫刻展(現代日本美術展)について調査し、その設立経緯における地元の市民運動家・上田芳江と当時神奈川県立美術館副館長で野外彫刻展プロモーターであった土方定一の役割を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
美術家の協力を得て取材が順調に進み、書籍の刊行など成果を出すことができた。これは当初の計画で考えられていた以上の達成となっている。ただ、ドナルド・ジャッドのニューヨーク近代美術館における回顧展に合わせて予定していたアメリカ調査が、新型コロナウィルス感染症拡大のため中止となった。その調査以外の現在までの進捗状況は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)アメリカのミニマリズムの形成に影響を与えた美術批評家クレメント・グリーンバーグのモダニズムの言説研究に取り組む。特にアメリカのローカルな文化をヨーロッパのモダニズムの文脈にどのように接続させたのかという問題に着目し、グリーンバーグの美術批評を検討していく。 (2)ローカルな地域でミニマリズムを形成した美術家たちが、1960年代から70年代にかけてどのような主題に関心を抱いていたのかを検討していく。その方策としてスペース・プランのメンバーや福嶋敬恭をはじめとする当事者に取材をするとともに、当時の美術、そして文学・映画・音楽などジャンル横断的に資料を収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドナルド・ジャッドのニューヨーク近代美術館における回顧展に合わせて予定していたアメリカ調査が、新型コロナウィルス感染症拡大のため中止となった。今後の使用計画として、ローカルなミニマリズムの調査およびアメリカのミニマリズムの形成に影響を与えたモダニズムの言説研究に取り組むための資料収集に充てる。
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