本研究の最終年度にあたる令和3年度は、これまでの研究をさらに掘り下げるとともに、まとめていくことで社会的意義のあるものとしていくことを目指した。また、本研究の成果を今後の研究へとつなげることに努めた。 まず、本研究課題を掘り下げるべく、アメリカのミニマリズムの形成に影響を与えた美術批評家クレメント・グリーンバーグのモダニズムの言説研究に取り組んだ。その成果として論文「クレメント・グリーンバーグの「ゴシック」」を発表した。グリーンバーグがジャクソン・ポロックの作品を「ゴシック」と評したことを、先行研究を踏まえて分析し、モダニズムの美術批評家として知られているにもかかわらず、ローカルな文脈との葛藤を抱えていたことを明らかにした。 次に、日本におけるローカルなミニマリズムの事例である鳥取の芸術家集団「スペース・プラン」についての研究を引き続き行った。これまでスペース・プランは1977年に実施した第13回展が最後の活動だと認識されていたが、1978年創刊のタウン誌「スペース」の記事を分析することで、スペース・プランのメンバーは70年代末に鳥取市で野外彫刻による街づくりを提案していたことが明らかとなった。その調査の一部を論文「タウン誌『スペース』を中心に:ローカルメディアと地域美術」として発表した。また、本研究の成果を広く周知するべく平成31年度の研究成果である『スペース・プラン:鳥取の前衛芸術家集団1968-1977』所収の論文を韓国語に翻訳した冊子を作成した。
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