1970・80年代における埼玉県の文化行政分析により、「民」と「官」による文化財保護分野が文化政策総体に与えた影響の解明に努めた。その結果、文化財保存運動が、戦後の自治体文化財保護行政の基礎形成に貢献したことを明らかにし、教育行政における文化財保護政策のみならず、首長部局主導の文化行政における文化財の活用へとつながっていったことを立証した。 しかし、80年代後半以降、文化行政は文化施設整備などの開発主義的様相を帯びる中で、文化的な豊かさを求めた文化行政は変質した。同時に文化行政としての文化財保護政策もまた、施設装飾などに文化財イメージを用いるなど、表層的な活用への傾倒が明らかとなった。
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