研究課題/領域番号 |
19K13036
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研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
チン ホウウ 多摩美術大学, 日本画, 講師 (80838590)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 楮 |
研究実績の概要 |
和紙の原料である楮はクワ科の落葉低木樹であり、産地は全国に分布している。よって、和紙において、楮が最も多く使われている原材料である。また、地域・気候・土地環境の差によって、靭皮繊維の品質が異なり、抄造された紙も特質が異なると考えられる。 日本では聖徳太子が楮の栽培を普及させ、701年美濃・筑前・豊前各国の戸籍用紙に楮紙が使われていたなど、古くから和紙の原料として広く利用されてきた。江戸時代になると、和紙の国産奨励策により、栽培が盛んになり、山間村落にとって貴重な収入源の一つであった。しかし、明治以降森林の植林活動の奨励によって楮農家が減少し、また、生産農家の高齢化及び後継者不足などにより、国産楮の不足問題に直面している。筆者の聞き取り調査によると、国産楮が不足のため現在海外から輸入される場合は少なくない。 日本の三大楮の1つである八女楮を調査するため、福岡県八女市で現地調査を行った。八女手漉き和紙はその起源が古く、文禄年間に発して以来380年の歴史を有し、筑後和紙の名において古くから世人の推奨を得て本日に至った。八女楮の特徴は、繊維が長いことである。八女楮が平均10.4ミリの長さであるという特徴が、強靭な和紙がつくられる理由である。しかし、楮農家の減少とともに、八女の手漉き和紙製造者も減少傾向にあると見られる。明治45年の1779戸が最多記録とし、大正期には1300から1400戸の製造者がおり、生産量がまだ安定していた。ところが、昭和3年頃から884戸まで減少し、その後、製造者数が減少し続け、昭和48年には27戸しか残っていない。さらに、2022年5月に筆者が聞き取り調査を行った結果、手漉き和紙製造者は6戸しか残っていないことが分かった。このように、1000年も持つ和紙は現在、紙漉き製造者や楮農家の後継者不足の問題に直面している。使用者の我々にとっても大事な課題であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度から2021年度にかけて日本国内の画紙をめぐる歴史的調査及び実践研究を行った。そして、2022年度において、画紙の原料の産地、繊維の分析について調査を行った結果、地域・気候・土地環境の差が、紙の原料である楮の成長に影響を及ぼす重要な要素であることが判明した。よって、日本全国の画紙に異なる特質が見られる。画家は画紙を用いる際に、画紙の特質を活かし、さらなる独自の技法を展開したことがわかった。ただ、本来研究を予定している東アジアの製紙に関する調査、また、研究成果の発表はまだ完成してないため、一年延長することに至った。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、以下の2つの方向で本研究を進めていく。 一つ目は、東アジアの画紙についての調査である。近代の日本は植民や国際友好親善を促進するため、東アジアにおける文化活動とは密接していると考えられている。紙の製造方法は大陸から朝鮮半島を経由し日本に伝来したと言われている。それ以降、長い年月を経て日本は製紙方法を改良し、原料の違いにより、独自な和紙および画紙が完成された。東アジアの中で、台湾および韓国においては、画紙として棉宣紙と韓紙が主に使われている。本研究では、それらの独自な手漉き紙と日本の和紙の発展を明らかにするために、現地調査を行う。 二つ目は、研究成果の公開である。本研究の考察の成果として、展覧会『紙の水墨・水墨の紙-日本画の新たな可能性-』を開催する。実践研究の成果(作品)は日本、台湾で公開展示する予定である。そして、展覧会の開催とともに調査報告書「近代日本画における画紙の特質による技法の展開および実践研究報告書」(仮題)を作成し、パネルの設置による公開展示を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、東アジアの伝統的手漉き画紙を調査するため、韓国の韓紙(全州韓紙博物館/国外旅費)、台湾の棉宣紙(長春棉紙廠・福隆棉紙廠有限公司/国外旅費)、そして、現地における聞き取り調査および原料の分析を行う。調査地への旅費は飛行機代およびホテル代、現地での交通費を計上する。そして、消耗品費として、基礎的な文献資料の収集を行ってきたが、不足している関連文献の費用も計上する。経費消減のため、図書館で貸し出しが可能な文献資料は、貸出しにより利用する(その場合、交通費・文献複写費のみ計上する)。 また、実践研究費用において、多種の和紙と画仙紙、韓紙を計上する。それに関連して成果物として還元するための画材と制作に必要な物を計上する。最後に、研究成果を公開するために、研究報告書の印刷費、編集費および展覧会開催に必要な経費(宣伝費・発送費・運搬費など)を計上する。
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備考 |
展覧会出品:「第48回東京春季創画展」入選、「第49回創画展」入選、「Will+s 展 2022」優秀賞受賞 成果発表(グループ展・個展):「日本画四人展–四重奏–」岩田屋三越美術画廊、「2022瀛風飄藝美展」新營文化中心(台湾)、個展「余白」陳ホウ宇展 ART SPACE 布布、個展「踏香」陳ホウ宇CHEN PENG-YU展 SILVER SHELLギャラリー
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