研究課題/領域番号 |
19K13038
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
飛田 勘文 早稲田大学, 坪内博士記念演劇博物館, 助教 (60800901)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 児童演劇 / 公共劇場 / 児童演劇の専門劇団 / 社会的包摂 / 多文化共生 |
研究実績の概要 |
本研究は、21世紀の児童演劇(プロの俳優が子どもの観客のために創り、上演する演劇)の専門劇団と現代演劇の劇団が創作する児童演劇の内容や創作方法を調査し、両者の間にある差異や隔たりを解明することを目的とする。続いて、その差異や隔たりを乗り越え、同分野を多くの劇団に開かれた分野にしていくべく、両者の間に児童演劇に関する共通理念や共通言語を形成していくことを試みるものである。 2019年度は、文献調査を通して日本の児童演劇の歴史、作品内容の傾向や創作方法などについての調査を行った。同時に、児童演劇の作品の創作も手がけている現代演劇の劇団の演出家、具体的には関根信一氏(劇団フライングステージ)や鳴海康平氏(第七劇場)などにインタビューを行い、彼らが如何なる理念や思想のもと児童演劇の作品を手がけているかを調査した。その結果、次の内容が浮かび上がってきた ―(1)現代演劇の劇団の芸術家たちは、(児童演劇の専門劇団の芸術家たちが主張するような)子どもと大人を区別する必要性を疑問視し、子どもと大人は対等であるという見解のもとで作品を創作しようとする傾向がある、(2)現代演劇の劇団の芸術家たちは、劇の構造そのものはシンプルにすることを心がけつつも、その内容においては、決して妥協することなく、人間というものをどう見るかという問いかけを、子どもと大人の両方に行うといった特徴が見られる、ほか。 また、今年度は、愛知県芸術劇場のプロデューサーである山本麦子氏にもインタビューを行い、県立劇場(公共劇場)と地元の児童演劇の専門劇団がともに歩んでいくことができるのかどうかなどを質問した。その結果、公共劇場には、公共劇場の役割というものがあり、地元の児童演劇の専門劇団と一緒に子ども向けのフェスティバルなどを開催しつつも、必ずしも地元の児童演劇の専門劇団の要求には応えることができない場合もあることが仄めかされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の後半、特に年が明けてから複数のインタビュー調査の実施を計画していたが、また、研究会での本研究の一部の発表を予定していたが、新型コロナウィルス感染症の拡大の問題により、それらの調査がキャンセルになった。そのため、調査および発表に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、コロナウィルス感染症の拡大の影響により、2019年度にインタビューすることができなかった現代演劇の劇団の芸術家たちや公共劇場のプロデューサーたちにインタビューを行うとともに、当初から2020年度に実施を予定していた児童演劇の専門劇団の芸術家たちにインタビューを行う。 しかしながら、コロナウィルス感染症の拡大の影響により、各劇団や劇場が、これまでとは異なる子どもたちとの関わり方を模索することが求められている。そこで、これから行うインタビューについては、インタビュイーに対し、コロナ禍あるいはニューノーマルにおける児童演劇のあり方についも質問し、児童演劇がこの問題をどのように乗り越えていけるかを探っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、2019年度に、月一程度で、児童演劇に関する勉強会を開催する予定だったが、依頼をしている講師とスケジュールが合わず、開催が延期となっている。また、コロナウィルス感染症の拡大の影響により、調査やインタビューを行うにあって県をまたいでの移動ができず、その分を2020年度に繰り越している。
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