研究課題/領域番号 |
19K13046
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
中屋敷 暁 (井口暁) 追手門学院大学, 社会学部, 准教授 (20839477)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 科学的無知 / 了解 / コミュニケーション / 意思決定 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「科学的無知文化の社会学(sociology of scientific cultures of non-knowledge)」の学説史的・理論的検討を行い、それを基に、日本の原子力・放射線関連分野における無知文化の多元性、階層性、政治的影響力について検討を進めることにある。 上記の目的を達成するために、2020年度は、2019年度に収集した資料の精査・分析を進め、(1)理論的基盤としての社会学的構築主義、(2)了解形成における無知の役割、(3)無知下での意思決定における暫定性の重要性について重要な知見を得た。 第一に、科学的無知文化の社会学の着眼点とアプローチの方向性を構想するために、この分野を支える基盤としての社会学的構築主義にまで遡り、理論的検討をすすめた。その成果を日本社会学理論学会で報告し、論文を刊行した。 第二に、人々の了解形成を目指したコミュニケーションにおける相互無理解と無知の許容の重要性について検討を進め、論文を刊行した。 第三に、科学的無知を伴う政策分野(核廃棄物処理政策など)においては、科学的知識や技術の不確実性と流動性ゆえに、暫定性・柔軟性を備えた意思決定が重要であることについて検討し、国際社会学会(ISA)で報告した。 一点目の成果は、無知の社会学の理論的精緻化を進める上で重要な意義を有する。二点目と三点目の成果は、科学的無知を伴う政策分野において専門家間およびステークホルダー間の見解のギャップを整理し、了解形成を進める上で重要な知見となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、ドイツでの在外研究・資料収集を実施予定であったが、COVID-19の影響により断念せざるをえない結果となった。その代わりに、1年目に収集した文献の包括的整理と分析を進め、「無知とコミュニケーション」、「無知と意思決定」について理論的検討と事例分析を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、2年目までの理論的研究の成果を総合するとともに、日本の事例に対する応用的研究をより一層進めることが重要となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はドイツでの在外研究の旅費にあてる予定であったが、断念せざるをえない状況となった。そのため、令和3年度の旅費および資料取り寄せ・購入等にかかる費用として使用する予定である。
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