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2020 年度 実施状況報告書

近世前期における〈勧化〉――勧化本作家の活動に注目して――

研究課題

研究課題/領域番号 19K13049
研究機関お茶の水女子大学

研究代表者

木村 迪子  お茶の水女子大学, 基幹研究院, 基幹研究院研究員 (40836475)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード近世仏書 / 勧化本 / 浄土真宗 / 浄土宗 / 羊歩 / 玄貞 / 出版規制 / 浅井了意
研究実績の概要

2020年度の研究成果について以下の通り報告する。
1)玄貞の著述に関する研究報告(第136回『書物・出版と社会変容』研究会)17世紀末に活躍した勧化本作家である、真宗仏光寺派の学僧・玄貞の著述活動を関係した書肆らの動向に重ねて再考した。18世紀初頭に出た類板重板の禁令が一概に新興の書肆から老舗板元を保護する目的があったと見なせない点を玄貞に関与した新興書肆らの動向から指摘、また、浅井了意の仏書の仮託者として知られる玄貞が、実は真宗本派の学僧・空誓の仮託本も手がけていたこと、更に玄貞が最終的には真宗聖教の注釈もつけられるようになった点を重視し、彼がその晩年には学僧の一として認められていた可能性も指摘した。
2)羊歩作『拾穂書』(巻上・中)翻刻と解題(『近世文芸 研究と評論』98・99号)本稿では羊歩の処女作『拾穂書』の翻刻とともにその著述と伝記の再考を行い、真宗の学僧として知られた羊歩が実は元々浄土宗僧であり、臨済宗への傾倒を経て、真宗に改宗した可能性が高いことを指摘。また、従来羊歩が了意の鼓吹物に刺激を受けて『往生要集直談』を執筆したといわれていたのを、その成立年時が遡る点、また了意の『大原談義聞書抄句解』に羊歩の『大原再三鈔』について触れる記述がある点から、その矛盾を指摘した。
3)初期の勧化本『浄土勧化標目章』に関する報告(『佛教文学』46号掲載予定)浄土宗僧侶・真海によって記された『浄土勧化標目章』に収録される源信母の諌言の和歌説話の話型がそれ以前の説話類に見いだせない点に注目し、その検証を行った。調査の結果、羊歩の『往生要集直談』収録話との重複が判明し、更に重複が当該説話に限定されないこともまた解明した。本書と羊歩の著述との深い関係から、従来真宗において伝播されたと見なされていた当該説話の収録歌が実は元々は浄土宗内において成立した可能性が高いことを明らかにした。
以上。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナウイルスの流行拡大により、当初予定していた書誌調査については全て中止となった。かわりにテキストの購入を行い、その内容から計画書の通りの進行が可能になった点、まずは報告する。
17世紀の勧化本を考える上で重要な初期の勧化本作家(羊歩、真海、空誓など)についての検証が完了し、更に17世紀における最大の勧化本作家である玄貞の著述に関する口頭発表を完了できたため、本研究はおおむね順調に進展している、と判断する。

今後の研究の推進方策

今後の研究については以下の通り予定している。
1)玄貞の著述に関する研究報告(掲載誌未定)昨年度完了した口頭発表を踏まえ、論文化を目指す。
2)妙音寺に著述に関する研究とその報告(掲載誌未定)
上記について、本年度も新型コロナウイルスの蔓延により、計画書通りの書誌調査が困難かと推定する。これについては昨年度同様、適切な書籍の購入、ならびに複写の活用をもって代替しようと考えている。

次年度使用額が生じた理由

当該年度における会計にて端数が生じたため、次年度にこれを繰り越し、書籍の購入に充当する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)

  • [雑誌論文] 源信母・諌言の和歌にみる近世期におけるハナシの発現2021

    • 著者名/発表者名
      木村迪子
    • 雑誌名

      佛教文学

      巻: 46 ページ: 1-13

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 〈翻刻〉『拾穂書』巻上/解題ならびに著者一考2020

    • 著者名/発表者名
      木村迪子
    • 雑誌名

      近世文芸研究と評論

      巻: 98 ページ: 1-20

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 〈翻刻〉『拾穂書』巻中/羊歩の著述2020

    • 著者名/発表者名
      木村迪子
    • 雑誌名

      近世文芸研究と評論

      巻: 99 ページ: 1-23

    • 査読あり

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公開日: 2021-12-27  

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