本研究では、「人を殺したかしら?」と呼ばれる芥川龍之介の遺稿群に関して、次のことを明らかにした。 【1】当該の遺稿は、芥川自身の手によって2~3種類またはそれ以上のバリアントを持った形で残されたということ。【2】それらの一部は散逸し、残存しているものも複数の資料所蔵施設に分散しているということ。【3】生前に芥川自身、周囲の関係者にたびたび独特の形で顕示していたことの意図。【4】原稿管理者であった葛巻義敏の「復元」作業において単に原型を復元する目的とは明らかに異なる目的で編集された痕跡。【5】その「編集」に関する傾向や方針を一定程度推定可能であること。
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