研究実績の概要 |
本年度は研究成果を多く発表することができた。 論文について、「岩倉使節団における文化比較と翻訳―モンテスキュー著・何礼之訳『万法精理』」(『明治の教養 変容する〈和〉〈漢〉〈洋〉』2020,1,勉誠出版)では、長崎唐通事出身の何礼之がモンテスキュー『法の精神』をどのように重訳し、そこに江戸から近代にかけてのどのような思想潮流が関わっていたのかをあきらかにした。「小林秀雄『実朝』論 」(「アジア遊学」2019,12,勉誠出版)では、近世以来解釈と研究が積み重ねられてきた実朝の『金槐集』について、小林秀雄が実見した本を明らかにするとともに、小林と同時代日本における古典受容と文体の関わりについて明らかにした。 また、「《翻刻》大阪朝日新聞社の日々――宮城県亘理町立郷土資料館江戸清吉コレクション蔵・渡辺霞亭関連書翰(付・日本近代文学館蔵渡邊霞亭関連書翰)」(「国語国文 薩摩路」2020,3)において、宮城県亘理町郷土資料館が蔵する江戸清吉コレクションを精査し、江戸から近代へと文学が変容する、大きな流れを素描することを可能にした。 編著について、岩波文庫『花火・来訪者 他十一篇』(2019,6)、『荷風追想』(2020,1)の二著を編み、両書の解説で、荷風と江戸文化の関わりについて明らかにした。 学会発表について、「書物表現の文学史」(2019,10,26,日本近代文学会特集シンポジウム「書物としての文学」於新潟大学)では、従来乖離していた表現研究と書物研究との接点を探り、フィクションのなかに登場する書物と、現実の書物とが、近代においてどのようにかかわりあっていたのかを明らかにした。
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