研究課題/領域番号 |
19K13055
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
多田 蔵人 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (70757608)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 文体 / 江戸文学 / 近代文学 / 書物 / 森鴎外 / 二葉亭四迷 / 国木田独歩 / 矢野龍渓 |
研究実績の概要 |
本年度は論文2本、資料紹介1本、一般向け解説2本を発表した。 論文「言葉をなくした男――森鴎外『舞姫』」(「日本近代文学」第105集)では、明治前期の文体論隆盛期のなかに『舞姫』を置きなおすことで、多彩な文体を操ることを理想とした男が、その高い能力ゆえに悲劇に陥っていく物語であることを示した。「書物のない場所――戦後文学に描かれた「書物」」(勉誠出版『大宅壮一文庫解体新書』)では、戦後の疎開などの状況下において小説のなかに「本」のない場所が多く描かれることを指摘し、書物が創造の源泉となるというそれまでの文学の前提が崩壊する時代として、占領期の文学を素描した。 資料紹介について、「「《翻刻と解題》国木田独歩書簡――佐佐城信子宛一通・矢野龍渓宛四通」」では、北海道時代の国木田独歩が恋人である佐佐城信子に送った手紙、そして日露戦争下に雑誌編集者として矢野龍渓に送った手紙を紹介した。解題では、前者の書簡一通が「ラブ・レター」の実例が乏しかった時代の貴重な文体実践であり、後者の書簡四通が日露戦報道における「写真」の価値を物語る文献であることを示している。 一般向け解説として、千葉一幹ほか編『日本文学の見取り図』(ミネルヴァ書房)にて「二葉亭四迷」と「森鴎外」を担当し、両作家の作品史など、知るべき事柄を解説した。 以上の活動を通じて、近世から近代にかけての文体、書物、メディアの変遷について明らかにし、成果として発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の発表という点では前年度までと同じく成果を発表することができたため、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、国木田独歩の近世文学受容に関する論文を発表する。また、これまでに執筆した文体史と書物史に関する論考をそれぞれ一冊にまとめ、発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的な感染症の流行のため、当初予定していた調査のおおかたが実行できず、文献収集と目録作成、論文執筆に支障が生じた。
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