研究課題/領域番号 |
19K13056
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研究機関 | 宮崎公立大学 |
研究代表者 |
楠田 剛士 宮崎公立大学, 人文学部, 准教授 (20611677)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 長崎 / 原爆 / 炭鉱 / 廃墟 / 青来有一 / 桐野夏生 |
研究実績の概要 |
「青来有一『爆心』の読まれ方」は、長崎在住の作家・青来有一の連作小説集『爆心』の受容についてまとめたものである。まず書誌を述べ、『爆心』が青来の代表作として発表媒体を広げていることを確認した。次に先行論についてまとめ、小説の構成や信仰の問題が早い時期から注目されてきたこと、ラジオドラマ・映画・翻訳のそれぞれで関心を集める短篇が変わってきたこと、東日本大震災以後も読み直しが進んでおり、今後も重要作になるということを述べた。 「「原爆文学」再読7―青来有一『爆心』」は上記も含むワークショップの概要と質疑応答の様子をまとめたものである。 「桐野夏生「『だから荒野』における師弟のわけ」は、小説に登場する、原爆被害の講演活動を行う老人(先生)とそれを助ける青年の師弟関係について論じた。先行論では主人公の主婦を導く老人が注目されてきたが、主人公や老人が日常から離れた得難い体験をするためには青年が不可欠であることを指摘した。 「荒野を描く―テレビドラマ『だから荒野』における炭鉱と原爆」は、上記の小説を原作とするテレビドラマの特徴を分析し、ドラマで新しく加えられた「炭鉱」のイメージに着目した。小説のドラマ化にあたっては、人物の再登場、人物設定の変更、場面の変更、新しい人物の登場、新しい場面の追加を行いながら、原作中にある「荒野を沃野に変える」というイメージを押し広げていること。青年の役割が小説と同じかそれ以上に重要になっていること。ジョー・オダネルの写真や松尾あつゆきの俳句を素材とすることで、過去の原爆作品から新しい物語を生み出す実践になっていること。また問題点として、「炭鉱」が建物の廃墟のみが協調され、炭鉱の持つ歴史性や特有の坑内労働のイメージが十分に生かし切れていないことを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ワークショップの報告と討論を踏まえて成果をまとめることができた。また小説の分析を踏まえてテレビドラマについても論じることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年2月~3月に調査を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大のため出張ができなくなった。今後もしばらくは県外での調査が難しいため、文献を取り寄せたり手元の資料を精査したりしながら研究を進めたい。またオンラインによる調査や聞き取りの可能性も探りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
【今後の研究の推進方策】でも述べたように、2020年2月~3月に調査を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大のため出張ができなくなった。今後もしばらくは県外での調査が難しいため、文献を取り寄せたり手元の資料を精査したりしながら研究を行う。またオンラインを通じた調査や聞き取りの可能性も探り、カメラ・マイク・ヘッドフォンなど必要な機材の購入も行う。
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