研究課題/領域番号 |
19K13056
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研究機関 | 宮崎公立大学 |
研究代表者 |
楠田 剛士 宮崎公立大学, 人文学部, 准教授 (20611677)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 長崎 / 原爆 / 詩誌 / 炮氓 / 山田かん / 後藤みな子 / 青来有一 |
研究実績の概要 |
「詩誌「炮氓」解題・総目次」は、長崎市内で1968年から77年まで刊行された詩誌「炮氓」(ほうぼう)の発行状況や参加同人の特徴をまとめたものである。以下について論じた。詩人の山田かん編集した本誌は、同じ山田が編集していた「橋」から原爆のテーマを引き継いでいたこと。長崎県詩人会の詩人が多く参加し、同人の拡大とともに原爆・戦争以外にもテーマを広げていったこと。多忙ななか始終雑誌に携わった山田はこの時期、詩作も批評も充実した仕事を残したこと。以上の考察に加え、雑誌の全体像が把握できるような総目次を作成した。 「後藤みな子『高円寺へ』に向かうために」は、長崎原爆後の家族をテーマとしている作家・後藤みな子の長篇『高円寺』についての口頭発表である。以下について論じた。後藤は自作が「原爆小説」と呼ばれることを固辞するが、デビュー当初は原爆を書くことに積極的であり、それが小説を書いていくなかで変化していったこと。『高円寺へ』の先行評価では、無力感・虚無感がキーワードになっていること。執筆背景として、構想の変化があったことと、高円寺の話題は80年代のエッセイから書かれていたこと。多用される霧、朧、靄、幻の表現は、高円寺の現在と長崎の過去をつなげるものとして描かれ、後藤のそれ以前の小説にも見られること。以上の考察に加え、これまで後藤に関する先行研究が十分でなかったことから、今後の研究の基礎として広く利用可能な、著作・関連文献目録を作成した。この口頭報告および文献目録は、さらに資料調査と考察を進めた上で、今後活字化する予定である。 そのほか、被爆地長崎を舞台にして原爆の記憶の問題を小説に描き続けている青来有一の経歴についてもまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実物資料の調査・閲覧・複写を行い、その成果をまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き不足・未見の資料の調査を行いながら文献目録の充実化をはかり、論文発表で成果をまとめ、ウェブでも発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度と同様にオンラインで参加できる研究会・学会が増えてきたことで出張費が抑えられたことが大きいが、対面のみの学会もあり、現物資料は実地で調査する必要があるため次年度に使用する。
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