本研究では『古今集』成立以前に用いられた和歌表現を通して、平安前期から中期にかけて、歌ことばがいかに生成・展開をしていくのかを明らかにした。複合動詞は前項動詞と後項動詞の組み合わせから成っており、表現の創出が容易である。特に遍昭は、比較的卑近な表現を用いた表現を生み出している。また、「扱く(こく)」を前項としたものは多くの歌人たちによって和歌に用いられた。延喜年間には「扱き混ず」を詠み込むことが時流にもなるほどであった。このような経過を経て和歌表現として定着をした複合動詞は、単なる表現としての域に納まらない。「本意(=物事の美的本質)」のある歌ことばとしての性格を有することになるのである。
|