研究課題/領域番号 |
19K13058
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
大貫 俊彦 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (70738426)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 明治時代 / 文芸批評 / 俳諧 / 内田不知庵 / 国民之友 / 国民新聞 |
研究実績の概要 |
2020年度の研究実績の概要と成果について説明する。研究計画に基づき、2019年度に取り組んだ『女学雑誌』誌上における蕉風俳諧の言及に関する成果を踏まえて、翌1890(明治23)年に『女学雑誌』から民友社の『国民新聞』『国民之友』に批評の場を移した内田不知庵の執筆活動について、明治25年3月の『文学一斑』刊行直前までの記事を対象に研究を行った。内容としては、①『内田魯庵全集』の著作目録等を参照しながら諸記事を精査して遺漏を補い、その過程のなかで不知庵が俳諧に言及、または自ら発句を詠んだ随筆を抽出し、②俳諧関連の記事がどのような観点から述べられたものかを系統ごとに分類、整理したうえで考察を行った。意義としては、①俳諧という一つの立脚点に立つことで、匿名や変名で執筆をしていた不知庵の記事を特定する手がかりになるということ、また②批評に俳諧を援用することで、文芸批評に対する新機軸を出すことができた一方で、批評そのものに対する向き合い方が問われるような事態も招いていたということが明らかになった。また、③不知庵が参照した江戸期の俳書についても可能な限り原本の記述にあたり、どのような俳書をもとに批評を執筆しているのかを調査をしたが、昨年に取り組んだ『女学雑誌』時代とは参照される文献も異なっており、不知庵の俳書への関心が明治23年以降も持続し、読書傾向も変化していることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の前半は、コロナウィルスによる感染拡大で資料を所蔵している図書館が長期にわたって閉館になり、資料を調査する機会を持てず研究が遅れた。なお研究内容の面においては障害は起きていないので、研究時間さえ確保できれば順調に進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は当初の計画に従って『文学一斑』に関する研究を進めていく。研究を進めていく過程で計画時には重視していなかった蕉門十哲の一人である各務支考との関連性が浮かび上がり、支考が不知庵に与えた影響について当初の計画と連動させながら研究を進めていくことにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大に伴う研究の遅延により、当初予定していた調査や研究を計画通り執行することができなかったために残額が生じた。使用計画としては研究資料の整理用消耗品、今後の研究の推進方策にも記した各務支考に関する文献、また俳諧関係の資料を購入する。
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