研究課題/領域番号 |
19K13064
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
鈴木 美穂 玉川大学, 文学部, 准教授 (40547915)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 文学 / 海外体験 / 西欧文化受容 / 美術 / ポスト占領期 / メディア / フランス / トラベルライティング |
研究実績の概要 |
本研究は、ポスト占領期の(1)各新聞・雑誌における美術言説調査・整理に基づく、文学者の海外特派員派遣体制・実態の調査・検証・分析(2)文学者による海外体験・美術言説の調査・検証・分析を通じて、当該期の文学者における西洋文化受容の内実解明を目的としている。 3年目の2021年度は、海外体験・美術言説についての情報・資料調査・収集を継続し、またそれに基づく文学者の海外体験・美術言説の検証・分析を進めた。 2020年3月以来、COVID-19パンデミックの影響により、国内外における研究調査、フィールドワークが制限されている。可能な手段での図書資料、複写資料の収集と分析に努めているものの、国内外大学図書館・調査機関の利用制限も継続しており、文献調査を先送りせざるを得ず、作業は大幅に遅れている。予定の国外調査も延期せざるを得なかった。前年度(2年目)は調査の蓄積もあり成果を形にできたが、今年度は研究成果をなかなか形にできない状態であった。 ただし、限界はありながらも再開している国内図書館・資料室に研究調査に赴き、資料収集を部分的に行うことができた。可能な調査の対象・方法の検討も行いつつ、これまでの調査を基盤に、文学者の海外体験と美術言説の具体的な検証を優先しながら研究を進めている。またコロナ禍でも開催された学会、研究会を通じ、さらに学会運営に関わることで、本研究に関連する占領期からポスト占領期にかけての知見を深めることができた収穫もある。今年度の成果は次年度に公開予定であるが、今年度は本課題に関連して、小林秀雄の美術批評を含む批評活動を思想史の中で捉えることを目指した研究書(綾目広治『小林秀雄 思想史のなかの批評』)の紹介を『日本近代文学』第105集に掲載した(日本近代文学会、2021年11月)。 なお、上記事情から本研究課題は一年間研究期間の延長がされることになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1年目3月以降、COVED-19パンデミックの影響により、国内外での移動や調査機関の使用が著しく制限され、国内外で予定している調査が十分に進められない状態である。
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今後の研究の推進方策 |
4年目はこれまでの成果を踏まえつつ、2年目3年目に実施予定であった事項も含めて取り組む。 具体的には、ポスト占領期を中心とする1950年代の各新聞・雑誌における美術言説調査・整理に基づく、文学者の海外特派員体制・実態の調査とともに分析を進め、文学的言説の特徴と西洋文化受容のあり方を明らかにしていく。さらに、それらが同時代に与えた影響や、それらの言説に通底する問題性などについて、分析を積み重ねていく。具体的な対象として、引き続き、小林秀雄と瀧口修造を中心としたフランス体験の調査・整理・分析を進める。そのうえで、美術批評に即して、美術(体験)の記述行為および美術受容における言語表現の機能の検討を継続していく。 本研究は、文学者の海外体験の調査が重要な意味を持つ。1年目にあたる2019年度に実施した具体的な調査に続いてのフランス・パリを中心とした現地調査、また全研究通じて、国内の他大学・専門図書館を利用した調査を予定していたが、COVID-19パンデミックの影響により国内外の移動・各研究施設利用制限が続いている。2022年5月の段階では、引き続き海外における現地調査は困難と見込まれるが、今年度もWeb上のデータベース利用や古書等の購入、また感染症対策を踏まえながら、受け入れを再開した国内機関での調査を随時可能な限り行うことで、研究課題全体の目標に向けて、臨機応変に状況に対応し、調査・研究を進めていく。事態の収束が見えない状況のため、このまま国内外ともに調査が難しいことも予想されるが、学術論文として研究成果の発表を行っていく。なお、2021年度検討を進めた成果に関しては、2022年度中に発表予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月以降2021年度末に至るまで、COVID-19パンデミックの影響により、他大学図書館の利用・海外での調査等の利用において、大きく制約を受けている状態である。そのため、予定していた旅費・資料収集が叶わず、次年度使用額が発生している。2022年5月現在も社会状況は十分に回復しておらず、依然として国内の他大学図書館や海外での調査機関利用制限は続いている。「今後の研究の推進方策」欄で述べたように、少しでも課題解決に近づけるべく、引き続き、Webデータベース、古書を含めて現物入手が可能な書物・資料の現物購入、遠隔複写入手を続け、調査・分析・検討を続けている。一部利用再開となっている機関を活用しながら、制限のある中でも可能な作業を優先し、課題遂行に努める。
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