研究課題/領域番号 |
19K13066
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
宮本 祐規子 国文学研究資料館, 古典籍共同研究事業センター, 特任准教授 (50720364)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 浮世草子 / 井原西鶴 / 江島其磧 / 挿絵 |
研究実績の概要 |
研究初年度である今年度は、西鶴以降の前期小説と特に絵画との関係性について基礎的研究を進めた。 まずは、西鶴の挿絵と出版状況について整理・調査を進めている。調査した機関は、京都大学文学研究科図書館、京都大学附属図書館、京都府立京都学・歴彩館、大阪府立中之島図書館など。特に大阪市立図書館での調査を契機に、初印本と後印本を比較し、目録の挿絵の並びから西鶴及び書肆の出版意図を明らかにするため調査・考察を継続している。 更に、挿絵から作品のヨミに結び付けるべく、『万の文反古』巻1-4「来る十九日の栄耀献立」を題材に、同時代茶道書の挿絵を並べてみることで、本章のテーマが茶道ではない、という試論をEAJSにてパネル発表した。(「17th-century Japanese Literature and Tea Culture as Seen from the Archives of the National Institute of Japanese Literature:The Works of Ihara Saikaku」ヨーロッパ日本研究協会(EAJS)、2019年9月15日、於筑波大学) また、西鶴の後続作者である江島其磧と八文字屋八左衛門について、八文字屋本の挿絵を通覧し、同時代作品との比較に着手している。 最後に、浮世草子以後について、近世後期の人気作者である暁鐘成の演劇を元ネタに利用する作品を、挿絵から論じ其磧と比較することで、其磧の時代物浮世草子作品についても新見を加えた論文を発表した。「暁鐘成『子持鼠花山姥』小考」(『国文学研究資料館紀要 文学研究篇第四十六号』2020年3月)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
西鶴及び浮世草子に関する基礎的な調査・研究が順調に進み、次年度以降の研究のための良好な見通しを得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、予定していた当初の計画通りに研究を進めていく。 また、当初あまり重要視していなかったが、挿絵に描かれた当時のものについて、なるべく現存するものを美術館や博物館にて実物の確認をしていきたい。浮世草子に描かれるものの地域による差異などについては、従来あまり言及されてこなかったが、特に食器や調度などには、かなり地域性が見られるのではないかと考える。辞書類での確認だけでは難しいため、可能なかぎり、どこで実際に使用されていたのかを重視して、調査していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度から新しい所属機関に移動したため、勤務の関係で調査に動ける日程が取りにくい状況だったことが一因。来年度には、このような状況は解消されるので、より精力的に調査・考察に努めることが可能である。
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