研究課題/領域番号 |
19K13071
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
杉淵 洋一 愛知淑徳大学, 愛知淑徳大学, 客員研究員 (00758138)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日仏交流 / ヨーロッパ滞在 / 相互扶助 / 種蒔く人 / 有島武郎 / 椎名其二 / 藤田嗣治 / 在外邦人 |
研究実績の概要 |
本年度は、コロナ禍によって、移動、それに伴う現地調査に大幅な制限が加えられてしまったため、基本的には、自身の行動圏で入手できる資料の調査やオンラインによる研究報告が活動の中心となった。2021年6月5日の第69回有島武郎研究会全国大会(オンライン)において「有島武郎の翻訳観―翻訳によって足されるもの失われるもの」、11月6日の日本社会文学会2021年度秋季宮城大会において「1956年夏、オンドヴィリエ村での小牧近江と椎名其二の再会」(オンライン参加)、11月13日の日本比較文学会2021年度東北大会において「有島武郎と『種蒔く人』創刊の地・秋田」(カレッジプラザ(秋田県秋田市))の3本の研究報告を実施した。予定していたヨーロッパでの現地調査を行うことができず、その成果について報告することが叶わなくなってしまったため、研究対象者達についての日本への帰国後の活動を中心とした報告になったところは残念である。また、これらの研究報告等をもとにした、論文「『種蒔く人』の精神を受け継ぐもの――1956年夏、小牧近江と椎名其二の再会を足がかりに」が掲載された共著『『種蒔く人』の射程――100年の時空を超えて』(『種蒔く人』顕彰会編・秋田魁新報社)、論文「有島武郎が辿り着いた翻訳観――翻訳によって足されるもの失われるもの」が掲載された学術雑誌『名古屋大学人文科学研究』第49号(名古屋大学人文科学研究会編)がともに2022年3月に刊行された。その他、研究課題に関連する書籍の購入や秋田市内にあるあきた文学資料館において、遺族より寄託されている小牧近江を中心とするフランス語資料等について、調査、翻訳の作業などに当たった。また、関係者からの情報収集などにも努めたが、コロナ禍による移動の制限により、大きな発見のようなことはなく、これまでに入手済みであった資料についての精査にあてる時間が多かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の中心は、フランス、ないしは、調査対象人物が活動したヨーロッパ地域における現地調査を実施するということであったが、2021年度は、2020年度に引き続き世界的に蔓延したコロナウィルスによる行動制限のため、予定していた海外における調査がまったくできず、それに伴いその成果を公表する機会、場所も奪われてしまう事態に陥った。それに代わる代替措置として、調査対象となる人物についての国内施設、関係者等への日本国内における調査についても検討したが、勤務機関からの県外への外出を自粛する要請が再三にわたってあったため、国内における現地調査もままならないという期間が続いた。そのため、資料については郵便でやり取りできる資料を活用することと、人伝に入手できる情報についてはオンラインでの通話などを活用して、出来るだけ効率的に入手することに努めたがある程度の限界があった。そのため、本年度、外部に発信できる本研究での主な活動としては、オンラインを含む3回の研究報告と、共著と雑誌による日本の研究論文の刊行、移動の自粛制限の要請の無かった場所にあったあきた文学資料館(秋田県秋田市)における関連資料の調査程度に留まってしまった。また、本研究は段階を踏んで、調査をより細かい部分へと発展させようと計画していたものであったので、その出発点となる海外での調査に全くとりかかれていないところに、容易には埋めがたい遅れを感じてしまっているというのが現在のところの率直な所感である。今後の研究の仕方についての再考を図って、出来るだけ迅速な研究の正常化、ないしは軌道修正が必要であると痛切に感じている。この研究の遂行を十全なものとするためには、(研究の年数の延長も含め)残された時間がどれくらいあるかということが問題なってくるはずであるが、当初の予定の期間(2022年度末)での完遂は、少なからぬ難しさがあることは否定できない。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍に伴う行動自粛の要請によって遅れていた部分を取り戻すために、今後は資料収集と国内での現地調査をできるだけ頻繁に行いながら、勤務先の夏季休業期間を利用して、3週間前後の海外での現地調査を実施する算段でいる。可能ということであれば、2022年度の春季の職場の休業期間も利用して海外での調査を行い、出来るだけ早い段階で、本研究に発生してしまっている全体的な後れを取り戻し、研究の予定を正常化させたく考えている。そのため、今後の時間はたいへん貴重なものとなり、現地滞在時における時間的なロスを少しでも防ぐためにも、出発前の国内にいる段階での綿密な現地についての情報収集と資料の入手を行っておき、円滑に海外での調査に向えるような周到な準備を心掛けておきたい。また、海外に滞在し、調査を実施する過程で、現地の研究者にも頻繁に連絡をとり、情報の収集を行うとともに、今後の当地、ないしは日本における勉強会やシンポジウムについての計画も立てたいと考えている。国内においても、昨年度、一昨年度と実施することのできなかった、遺族や関係者からの聞き取り調査等を再開し、一つの研究としてまとめられるように善処する次第である。また、国内、国外を問わず、研究成果について学会、シンポジウム等の学術的な場を通して報告を行い、研究成果を発信していくことに努めたい。コロナ禍がまだ完全には収束していると言えない状況で、2022年度夏期の海外への渡航については判断しがたいところもあるが、本研究を少しでも前進させることができるように、状況に応じた判断を繰り返しながら、(現状の中で)最善の研究成果があげられるように努力と工夫をしていきたい。そのためにも、常に複数のプランを柔軟に用意しながら、研究が行き詰らないように細心の注意を払っていく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による勤務先等からの行動自粛要請により、本研究において必要不可欠なものとして予定していたフランスを中心とするヨーロッパにおける調査が実施することができなくなったため、その分、本研究の遂行そのものが時間的に遅れてしまっており、その遅れを取り戻すために、当初の年度内の予定よりも多い回数、多い日数で海外調査が必要となるため。また、海外での調査のみならず、国内における調査や内外を問わないシンポジウムの開催も、ここ2年はコロナ禍によって滞ることが多くなってしまっていたため、研究計画を立てた当初に予定していた調査やシンポジウム等を今後に実施するためにも次年度使用額が必要である。次年度の使用計画については、2度(夏期2週間、春期2週間)のヨーロッパへの渡航の際に発生する旅費が45万円×2で90万円、国内調査のための旅費が15万円、シンポジウム(場合によっては研究会)の開催費が10万円、書籍等の資料の購入費が15万円、雑費3万円の計133万円前後を予定している。ただし、コロナ禍の収束がいつになるかわからないため、何らかの制限によって海外への渡航が困難となった場合には、その旅費の一部を国内調査や資料の購入に回し、出来るだけ研究を先に進めるような使用方法に切り替えることも代替の策として考慮に入れている。
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