研究課題/領域番号 |
19K13072
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
服部 徹也 東洋大学, 文学部, 講師 (80823228)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 夏目漱石 / 岩波書店 |
研究実績の概要 |
夏目漱石が東京帝国大学で行なった英文学講義のうち、「18世紀英文学」講義の受講ノート(県立神奈川近代文学館所蔵)の一部を翻刻して注釈を付し、『文学論』などの漱石の一連の文学理論の構想や初期創作とどのように関わる講義内容であるかを明らかにすることができた。その成果は所属大学の紀要に掲載し、続稿を用意している。 また、東洋と西洋、双方の文学に通暁する文豪漱石というイメージを批判的に再検討するため、漱石と同時代の中国文学者との交流が薄かったこと、中国出身の作家らの漱石評価との非対称性を、1931年上海での張我軍による『文学論』翻訳の周辺を手がかりに明らかにした。また、現代の漱石評価に影響を与えた批評家、柄谷行人の漱石論を再検討し、そこで『文学論』という理論が特別な位置を与えられていること、それが同時に夏目漱石という理論家であり文学者であった作家を日本近代文学のなかの例外として位置づけることに根拠をあたえているということを明らかにした。 岩波書店版『漱石全集』各種の研究に先立って、戦後の漱石研究をささえた功労者の一人である荒正人の作成した各種の漱石年譜を収集し、比較を行なった。その結果、微細な部分で記述のニュアンスの変化があることがわかった。たとえば漱石の徴兵忌避をめぐる表記は、戦前に刊行された松岡譲による年譜の表現を引き継いでいることがわかった。またこうしたデリケートな問題について、小宮豊隆の評伝『夏目漱石』においても版によって記述の変化があることが明らかとなった。今後はこうした年譜や評伝、作品解説の間の影響関係を追究していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス対応により文学館などを訪問しておこなう資料調査、および翻刻補助のアルバイトを雇用し研究室に出勤してもらうことを中止せざるを得なかった。その間、資料収集につとめるとともに、すでに前年度に撮影済みの資料写真データを用いて翻刻作業を進めた。また、従来予定になかった荒正人の年譜を調査対象に加えることで、研究の遅滞を避けることにつとめた。しかしながら、従来予定していた『漱石全集』編纂資料の翻刻の進捗状況としては遅れていると言わざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、資料写真データとその翻刻データを統合して管理するソフトウェアを入手し、テレワーク環境で資料翻刻アルバイトを遂行してもらう準備を進めた。これにより、今後は新型コロナウイルスの流行の状況に左右されることなく、アルバイトを雇用した資料翻刻の効率化を図ることができる。これにより、遅れている『漱石全集』編纂資料の翻刻を今年度中に完了するとともに、翻刻作業と並行して、注釈を付す作業を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス対応により資料調査のための出張を中止した。また、アルバイトを雇用し大学構内で翻刻を行なう作業を断念した。そのため、旅費・謝金にあてるべき金額を次年度に繰り越し、次年度でこれらの作業を進めることとしたい。アルバイトについては増員を検討するとともに、テレワーク環境での作業の準備を整えた。
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