研究課題
若手研究
岩波書店の決定版『漱石全集』の編纂過程の資料を撮影し、翻刻・注釈を付し、データベース化することが完了した。これにより全集編纂にかかわって漱石関係資料がどのように岩波に提供され、資料が選別され、本文が決定していったのかを具体的に追うことができるようになった。今後の展望として、森田草平や小宮豊隆ら関係者の全集編纂に関する書簡を翻刻しデータベース化することで、全集編纂の動向を複数の視点から描き出していくことが望まれる。
近代文学研究
文豪夏目漱石、文化的教養を重んじる岩波書店というイメージがどのように形成されていったのかを考えるうえで、没後すぐに刊行され現在までリニューアルを重ねながら継続されてきた『漱石全集』の編纂は重要な手がかりとなる。厳密な校訂を強調し、総索引を付すなどゲーテら外国の文豪の全集にも匹敵する構成をそなえ、小説だけでなく俳句や日記書簡などを収録することで、東洋と西洋の文化を融合させた文豪漱石という作家像を書籍そのものが体現するように『漱石全集』はデザインされてきたのだ。