研究課題/領域番号 |
19K13074
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
富 嘉吟 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (00802696)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 松崎慊堂 / 和刻本 / 漢籍 / 江戸時代 |
研究実績の概要 |
本年度は引き続き松崎慊堂に関する基本的な資料を調査、整理した上で、一部の特定の漢詩集に関する事例研究を行っている。具体的には次のようである。 1、『慊堂全集』の書名索引を作成した。索引は『慊堂全集』が言及する漢籍の書名において、その所在の巻数、年月、篇目名、頁数を検索できるようにしたものである。それによって、特定の漢籍に関する研究を行う際に当該内容を素早く検索出来る。 2、松崎慊堂が文化十五年(文政元年、1818)に刊行した『海録碎事』の成立背景、刊行状況を確認した。確認したところ、文化本は慊堂の父の旧蔵本に基づいて刊行したものであり、紙幅を省くために、大陸系刊本の様式を大幅に改変した。文化本は通行本を重刻したものであるが、万暦年間以降の四百年間に、東アジア地域の唯一の刊本としてその意義が甚だ大きい。また、滋賀大学附属図書館教育学部分館には『海録碎事』二十二巻(文化四年香取重周據嵯峨天龍寺延慶庵藏本手鈔)が所蔵されている。松崎慊堂が香取重周本の存在に気づいていないようだが、二本が同じ文化年間に現れたものであり、日本における『海録碎事』の流伝において大変意味深いことである。 3、松崎慊堂が披見した漢籍貴重本のうち、淳煕本『集韻』、高山寺本『齊民要術』、覆元本『資治通鑑』、元版『文章軌範』、室町覆宋本『山谷集』、景鈔宋本『旧唐書』など代表的なものを選出し、それらの本文状況や伝来、現存状況などの資料を整理した。それを踏まえて、松崎慊堂の漢籍享受の様子を明らかにし、江戸時代後期における漢籍貴重本の蒐集・流伝の実態の一側面を解明した。口頭発表した後、論文にまとめて公刊する予定である。 4、国立公文書館所蔵の『懷仙堂書目』を調査、複写し、翻刻を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染症のために現地での資料調査が困難になり、全体の進捗が予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1、感染症対策を徹底する上で、居住地域(首都圏)での資料調査を再開する予定である。 2、データベースやデジタルアーカイブを積極的に利用し、現地調査の回数を可能の限りに減らす。その場合には、旅費・日当として計上していた予算を、データベースの購入に振り替える。 3、遠方への出張をできるだけ避けるために、居住地域(首都圏)の蔵書機関の所蔵資料を優先的に調査する。 ただ、感染症の収束の見通しが立たないことに鑑みて、研究期間の再度延長も視野に入れる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:感染症のため、現地に赴いて資料調査することができなくなったので、当該の旅費・資料複写費が全部次年度に繰り越される。 次年度の使用計画:感染状況に大きな改善が見られないうち、旅費の部分を200,000円まで減額し、物品費(データベース購入費など)に振り替える。人件費とほかの雑費は、計画通りに執行する予定である。
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