研究課題/領域番号 |
19K13080
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
澤西 祐典 龍谷大学, 国際学部, 講師 (30771133)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 不思議の国のアリス / ピーター・パン / 芥川龍之介 / 菊池寛 / 小學生全集 / 旧蔵書 / マーガレット・タラント |
研究実績の概要 |
『小學生全集』(興文社・文藝春秋社)シリーズの一環として刊行された、芥川龍之介・菊池寛共訳『アリス物語』および『ピーターパン』について研究を進めてきた。昨年度は口頭発表二本、学術論文二本、書籍一点の成果があったことをここに報告する。 主要なものだけに触れるが、学術発表は、日本ルイス・キャロル協会第27回大会(2022年10月29日、会場:大妻女子大学千代田キャンパス、オンライン併用)において、「菊池寛・芥川龍之介共訳『アリス物語』・『ピーターパン』について」という題目にて行った。芥川の文脈からとらえた『ピーターパン』が『小學生全集』に採択された意義や芥川の著作との関わり、作品や芥川の旧蔵書(日本近代文学館所蔵)との関連について報告し、『アリス物語』についてはユーザーローカルAIテキストマイニング(https://textmining.userlocal.jp/)を用いて、すでに先行訳として指摘がある楠山正雄訳『不思議の國』(1920、家庭読物刊行会)との隔たりについて主として分析を行った。学術発表はとしては『近代作家旧蔵書研究会』第一号(2023・3)に、「作家旧蔵書研究の可能性――芥川龍之介旧蔵書・洋書を例として――」の題目で発表した。論文内で、芥川旧蔵の"Peter and Wendy"(Hobber&Stoughton)の書き込み箇所や随筆「彼」(1927・1)との関わりに触れている。また、研究目的に掲げた「(当該書籍を)一般読者が親しめる形で普及したい」という目的に従い、グラフィック社より『芥川龍之介・菊池寛共訳 完全版 アリス物語』(2023・2)を刊行した。原書(菊池・芥川共訳『アリス物語』)にあった脱落箇所や誤植を補い、芥川・菊池との関わりについて注釈を施した。発売から2月立たずに3刷重版となっており、研究成果が多くの読書の目に触れる機会になったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画より遅れているが、研究の目的として掲げた1.下訳との隔たりを明らかにする、2.芥川と『ピーターパン』の関わり、3.菊池寛・芥川龍之介共訳『アリス物語』の復刊・普及という三つの柱はおおむね達成されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況の欄でも報告したが、当初予定していた1.下訳との隔たりを明らかにする、2.芥川と『ピーターパン』の関わり、3.菊池寛・芥川龍之介共訳『アリス物語』の復刊・普及という三つの柱はおおむね達成されつつある。昨年度内に、『芥川龍之介・菊池寛共訳 完全版 アリス物語』(グラフィック社)の刊行記念イベントとして、一般読者が参加できる会を三回実施したが、今後も研究成果を発信する場を引き続き設けたい。また、得られた成果について学術論文にまとめて、プロジェクトの完成としたい。また、国際共同の可能性について模索したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料調査後の文献調査など、翌年度に発生する見込みがあったために少額ではあるが、次年度に経費を持ち越すこととなった。
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