研究課題/領域番号 |
19K13083
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
安岡 佳穂子 (井黒佳穂子) 国文学研究資料館, 古典籍共同研究事業センター, 特任助教 (90743104)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 御伽草子 / 異性装 / ジェンダー / 異類婚姻譚 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症対策に伴う緊急事態宣言などで、県をまたいだ資料調査や、対面での研究会が予定通りには実施されなかったことから、今年度はオンラインでの研究会を中心に活動を行った。2020年10月30日(土)に開催されたジェンダー研究会(コロナ対策のためZOOMを利用したオンライン研究会として実施)にて、「公家物として見る『玉水物語』-女たちの楽園-』というテーマで口頭発表を行った。 従来、御伽草子では「異類物」に分類され、狐女房譚という点で論じられることが多かった『玉水物語』であるが、『狐の草子』や『木幡狐』のように、正体の露見により、これまでの関係が破局してしまうという、「異類物」の特色がなく、姫君や女房との和歌を交えたやりとりや、紅葉合わせなど、公家社会を中心に語られているという特徴を有していることから、改めて「公家物」として捉え直し、分析を行った。 また、中世王朝物語『しぐれ』や『在明の別れ』など「異性装」が描かれた作品と比較し、異性装を行う女性たちの性自認を通して、『玉水物語』が「極めてプラトニックで理想的な女性の世界」を描き出していること、さらに「恋の破局と女性の栄達」という類似の構造を持つ作品として、『玉水物語』が『あさぎり』『むぐらの宿』『志賀物語』と同じく〈しのびね型〉の系譜を受け継いでいることを明らかにした。 今後はこの研究をさらに進めていく予定だが、コロナ対策に伴う緊急事態宣言など、状況を鑑みながら準備を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の流行により、対応策として遠方への移動や、対面での会話が制限されたため、資料の所蔵機関に赴いて直接調査することが難しくなり、計画通りの遂行は困難になるかと思われた。 しかし、近年は大型コレクションを有する図書館や大学だけでなく、地方の博物館や図書館などでも資料のデジタル化が進められており、所蔵資料の画像データベースが公開されていることから、インターネットで閲覧可能な資料が徐々に増えてきている。こうしたオンライン上での資料閲覧を積極的に用いることで、調査研究については対応できると認識している。一方、公共機関等におけるテレワーク推奨により、資料の掲載許可などの手続きに関しては、平常時よりも時間がかかることになると考えられるため、あらかじめ余裕を持って申請しておく必要があるだろう。 また、研究会などこれまで対面で行われていたものについても、「Skype」や「ZOOM」など、PCやタブレットを用いたオンライン会議アプリケーションを利用することによって、対面ほどの柔軟さはないものの、発表、質疑応答、議論という対応が可能となった。環境に合わせた資料作成や議事進行が必要となるが、周辺機器やアプリケーションを活用することで、昨年度よりも環境は整えられつつあり、概ね予定通りに発表計画を進めることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度より引き続き、全世界的に爆発的な広がりを見せる新型コロナウイルス感染症の流行により、政府により蔓延防止、緊急事態宣言などが主要都市部でなされ、調査資料を所蔵する大学、図書館、資料館などの各種機関は一時閉館及び開館時間の短縮を余儀なくされている。往時のような研究環境にはほど遠く、利用施設や閲覧資料は限られるが、これまでの成果をとりまとめていきたい。 今後も必要に応じて資料調査、ならびに撮影を考えているが、現在も感染症の広がりは予断を許さない状況であり、当初の研究計画通りに進まないおそれがある。政府、各機関の対応に従って行動し、当初の研究計画を見直し、規模の縮小や変更も含めて検討しなければならないかもしれない。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、政府により蔓延防止、緊急事態宣言などが主要都市部でなされ、県をまたいだ資料調査や、対面での研究会を計画通りに実施できない状況にあった。当面の間は引き続き感染症対策の影響を受けることが想定されるため、オンラインの利用した研究会や貴重資料の閲覧、関連する書籍を購入することで、不足を補いつつ、研究を進めていきたい。
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