研究課題/領域番号 |
19K13091
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
城山 拓也 立命館大学, 言語教育センター, 嘱託講師 (60749109)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 葉浅予 / 漫画 / 中国近代美術 / メディア / プロパガンダ / 日中戦争 |
研究実績の概要 |
2019年度前半は、葉浅予の1930年代から50年代までの創作活動を対象に、国内外で資料調査と整理を進めた。具体的には、中国の上海図書館にて、8月3日から8日にかけて『救亡漫画』、『抗戦漫画』といった重要雑誌、および『戦闘画報』、『抗日画報』、『今日中国』、『耕耘』、『清明』といった文学史上マイナーな雑誌のマイクロフィルムを精査し、葉浅予の絵画、文章について調査、整理を行った。国内では、立命館大学図書館にて、『申報』、『新華日報』を閲覧するほか、インターネット・アーカイブ「Late Qing and Republican-Era Chinese Newspapers」や「中国歴史文献総庫」を利用し、中国各地の新聞資料から葉浅予関係の記事を洗い出した、さらに、中国の古書店で古書(特に画集)を購入した上で、可能な限り葉浅予の作品創作の実態について整理を進めた。 2019年度後半には、以上の資料調査と整理の結果に基づき、各種シンポジウム、研究会で研究報告を行った。例えば、10月6日、国際シンポジウム「戦後中日芸術交渉――継承与展開」(於中国・清華大学)にて「1940年代中国漫画的変化――以葉浅予『打箭炉日記』為例」を発表し、新資料を紹介するとともに、葉浅予の1940年代の創作活動の意味について基礎的な考察を加えた。2020年1月25日には、20世紀メディア研究所第134回研究会 (於早稲田大学)にて「日中戦争期における葉浅予の宣伝工作」を発表し、作品整理の状況を報告するとともに、こちらも基礎的な作品分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主眼は、葉浅予の1930年代から50年代までの創作の変化に着目し、その意味を探ることにある。 以上の目標を達成するため、初年度は国外図書館、国内図書館、インターネット・アーカイブ、古書店での資料調査を通じて、データベースの作成を進めた。また、本研究の方向性を確認するため、シンポジウムや研究会で研究報告を行い、専門家の意見も得るようにした。 しかしながら、上海図書館に主な調査対象であった資料が所蔵されていなかったため、いまだ資料面での全貌が明らかになっているとは言い難い。葉浅予の娘・葉明明氏へのインタビューについても諸事情により実現できていない。早急にさらなる調査と整理、およびインタビューを実現させるよう方策を練るつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、2020年度は2019年度に引き続き、国内外の図書館、資料館にて補足的な調査、およびセミナーの開催を行うつもりであった。しかしながら、新型コロナウイルスの影響により、国内外への出張が難しい状況となっている。特に、中国出張の実現は絶望的な状況のため、インタビューの実施、および国外研究者との研究交流も不可能である。 したがって、2020年度は当初の予定を変更し、手元にある資料に基づいて論文を執筆したいと考えている。また、今後の情勢を見極めつつ、オンラインによるセミナー開催、および研究発表の機会を伺いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由について。本来は2020年2、3月に、中国(北京の中国国家図書館)へ出張する予定であったが、新型コロナウイルスの影響のため断念せざるを得なかった。 2020年度は、状況を見極めつつ、中国出張の可能性を探りたい。もし中国出張が不可能となってしまった場合も、マイクロフィルムや周辺資料の購入に充てるなどして、少しでも研究を前進させるつもりである。
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