研究課題/領域番号 |
19K13095
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
高橋 愛 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (90530519)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ハーマン・メルヴィル / アメリカ / ジェンダー / 主婦 / 家庭 / 19世紀 |
研究実績の概要 |
研究計画では、『アメリカのつましい主婦』(The American Frugal Housewife, 1828)をはじめとするリディア・マライア・チャイルドの著作の分析を行い、彼女が家庭性の概念をどのようにとらえていたのか検証するとともに、その見解が彼女の文学作品にどのように反映されているのかを分析するとしていた。しかし研究代表者の研究環境を考慮し、3年目に実施する計画であった男性作家による主婦表象の分析を前倒しして実施した。 具体的には、ハーマン・メルヴィルの短編の「私と私の煙突」("I and My Chimney," 1855)と「林檎材のテーブル」("The Apple-Tree Table," 1856)を取り上げ、研究を行った。夫婦と2人の娘から成る家族が繰り広げる騒動が描かれるこの2つの作品において、語り手の妻であるミドルクラスの主婦がどのように描かれているのか、その表象が当時の社会で浸透していた主婦のイメージやジェンダー規範とどのような関係をもっているのかの分析を行った。メルヴィルはこれらの作品で、「本物の女らしさ」という概念に象徴される当時の理想的女性像からは逸脱するところが多分にある主婦の姿を描いている。しかし、居住空間(特に居間)における主婦の役割についての同時代の言説等を踏まえると、彼が提示する逸脱的な主婦像は、家庭を切り盛りする立場にある現実の女の姿を反映したものだと考えられるという結論を得た。 研究成果は、日本アメリカ文学会東北支部例会と日本アメリカ文学会全国大会において口頭発表を行うとともに、『欧米言語文化論集Ⅳ』(岩手大学)に論文として発表した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究環境の整備等の問題から、研究計画では3年目に実施することにしていた男性作家による主婦表象の分析を前倒しをして実施した。研究方法について変更することにはなったが、学会での研究発表や論文の刊行を通して研究成果を発信することができたことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に男性作家による主婦表象の分析を行うことへと変更したのに伴い、研究計画では1年目に実施することにしていたリディア・マライア・チャイルドの著作の分析を2年目に行い、ビーチャー姉妹の著作の分析を3年目に行うこととする。 国内外の学会において関連分野の研究動向を把握するとともに研究成果の発表を行う予定であるが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で学会参加ができなくなる恐れがある。その場合には、口頭発表の予定を次年度以降に変更することにより対応していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画では国際学会に参加することにしていたが校務等の都合で参加を見合わせため、使用予定であった外国旅費に相当する金額が次年度使用分となった。翌年度分として請求した助成金と合わせ、外国旅費として国際学会への参加に使用する計画である。なお、新型コロナウィルスの感染拡大をめぐる状況により外国旅行の実施が不可能となる場合には、設備備品費に充当し研究図書をはじめとする資料の購入に使用する。
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