研究課題/領域番号 |
19K13095
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
高橋 愛 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (90530519)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | キャサリン・ビーチャー / ジェンダー / 家庭性 / アメリカ / 19世紀 |
研究実績の概要 |
申請時の研究計画ではナサニエル・ホーソーンやハーマン・メルヴィルといった19世紀中葉の男性作家の小説における主婦の表象について研究を進めるとしていたが、初年度(令和元年度)での実施に計画を変更した。それに伴い、リディア・マリア・チャイルドによる家事アドバイスの研究を2年目に、キャサリン・ビーチャーおよびハリエット・ビーチャー・ストウによる家事アドバイスなどについての研究を3年目に実施することに計画を変更していた。変更後の計画に従い、本年度はキャサリン・ビーチャーの『家政学論』(1841)の分析を行うとともに、前年度(令和2年度)に行ったリディア・マリア・チャイルドの『つましい主婦』(1829)に関する口頭発表を論文として刊行した。 『家政学論』においてビーチャーは、従属性を女の美徳として掲げ、女は夫に従属し家庭に留まることによって家庭内で道徳的影響力のみならず公的影響力も持つことができるようになるとの主張をしている。ミドルクラスの女を家庭に留まらせるためにビーチャーが採った戦略は、主婦業/家政の専門科目化・専門職化、つまり、家政という私的な営みに公的な地位を与えるというもので、分離領域をもとにしたジェンダー観に沿うもののようでいて実際には領域侵犯をしている。ビーチャーが奉ずる家庭性では、ジェンダーに基づき切り分けられる領域の境界線がゆらいでいるとの結論を得た。 ビーチャーに関する研究の成果は、日本アメリカ文学会東北支部例会での口頭発表で公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外での資料収集や学会参加を計画していたが、新型コロナウィルスの感染状況が収束しなかったため引き続き実施内容は大きく制限されることとなった。しかし、令和2年度の研究成果の論文刊行と令和3年度の研究成果の口頭発表を行うことができたため、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度はおおむね順調に研究を進めることができたが、研究期間全体では新型コロナウィルスの感染拡大の影響により実施内容の変更や遅れが生じている。そこで研究期間の延長を行い、チャイルドやハリエット・ビーチャー・ストウのフィクションの分析など、過年度に実施しきれなかった点に着手をするとともに、本研究課題の総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画では学会参加および資料収集のための国内旅費および外国旅費と物品費に計上していたが、新型コロナウィルスの感染拡大が止まらず国内外の移動が大きく制限されたため、次年度使用額が生じることとなった。そのため研究期間を延長し、次年度使用額を学会参加および資料収集のための外国旅費として使用する。なお、次年度も国内・外国の旅行の実施が難しい場合には、旅費に相当する分を物品費にあて、研究図書をはじめとする資料の購入に使用する。
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