研究課題/領域番号 |
19K13106
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
雲島 知恵 奈良女子大学, 理系女性教育開発共同機構, 講師 (50737434)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 旅行記研究 / ジェンダー / 文化外交 / トランスパシフィック |
研究実績の概要 |
本研究は、日英米の女性による環太平洋地域に関する文学・旅行記研究を通して、日露戦争から第二次世界大戦終戦までの20世紀前半の三ヶ国の女性作家による芸術・情動を媒介とした準外交活動を追い、その可能性と意義について検討することを目的とする。文学・芸術活動を外交の一形態と見做すことで、女性の政治・国際関係分野での活動と貢献の可能性を追究するとともに、活躍を阻む障壁とその克服の緒についても考察する。 研究2年目の令和2年度は、米国側の資料の収集活動を主に行った。特に、戦間期の東京に存在した国際的女性文筆家グループTokyo Penwomenのメンバーとその周辺に存在した女性達の資料を収集し、その活動の軌跡を追うことに努めた。具体的には、Frances Hawks Cameron Burnett、Anna B. Shepley Omori、Muriel Orr-Ewing関連資料が挙げられる。特にBurnettについては、九条武子からの私信など、彼女と日本人女性との交流関係を描き出す貴重な一次資料を発見することが出来た。 Tokyo Penwomenについては、外国人作家らと日本人作家らを繋いだパイプ役として、朝日新聞最初の女性記者竹中繁の活躍があったことも判明した。竹中については、山崎真紀子らによる先行研究から日中関係の改善に尽力したことが分かっており、Tokyo Penwomenとその周囲に存在した女性文筆家らの国際的ネットワークの拡がりと準外交活動の内容を考察する上で興味深い。 これらの詳細なケーススタディは、Akira IriyeやMichael Auslinら歴史学者による20世紀前半の日英米の文化外交に関する先駆的研究の盲点となっている女性の文化外交活動及び貢献を描き出すことを可能とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍により、予定していた米国各地の図書館、資料館訪問が実行できなかったことが主な理由である。2020年秋頃までは多くの施設が完全に閉まっていた。秋頃よりオンラインでの複写依頼等のサービスが開始したため、可能な手段を通して資料の収集を行ったが、現場で作業する人数にもコロナ禍のため制限が設けられており、複写依頼を行ってから実際に複写物が届くまで数ヶ月から半年かかったため、資料の分析にも大幅な遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
遅れが出ている米国関連の資料の収集と分析を行うとともに、予定通り、戦間期から第二次世界大戦までの期間の資料の収集と作品の分析を行う。コロナ禍の収束が見えない中で一次資料の収集については今後も難しい状況が続くかもしれないが、オンラインで可能な限り実行するとともに、当初の予定ほど一次資料の発見に依らない、出版物の分析に主軸を置いた研究に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため予定していた図書館、資料館での資料収集が出来ず、旅費を使うことがなかった。また、昨年度に引き続きシカゴで開催予定のFiMAの学会が再度延期になったこと、研究発表を行ったNAVSAの学会セッションはオンラインであったことで、国際学会出席のための旅費を使うことがなかったことも次年度使用額が生じたことの理由である。 使用計画としては、一次資料の収集をオンラインで可能な限り続ける上での複写費用に使用すると共に、取り扱う作家数を増やし出版物の分析に主軸を置いた研究を進めるための出版物の購入に使用する。また、FiMAのシカゴでの学会については来年度対面形式での実施が予定されているため、本学会への参加に使用する。
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