研究課題/領域番号 |
19K13106
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
雲島 知恵 奈良女子大学, 理系女性教育開発共同機構, 講師 (50737434)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジェンダー / 文化外交 / トランスパシフィック |
研究実績の概要 |
本研究は、日英米の女性による環太平洋地域に関する文学・旅行記の研究を通して、日露戦争から第二次世界大戦までの3ヵ国の女性作家・芸術家による芸術、また芸術作品によって引き起こされる情動を媒介とした準外交活動の軌跡を辿ると共に、再評価を試みるものである。女性の政治・国際関係分野での活動と貢献の可能性、またその意義について検討することを目的とする。 令和3年度は、より広い視座から、英文学研究における本研究の占める位置、更にその意義及び貢献を確認すべく、英文学と環太平洋地域との英文学史における繋がり、またその表象と役割等について、トランスパシフィック・スタディーズの研究成果等を参照しつつ検討した。Lisa Lowe、Laura Doyle、Wai Chee Dimock、Susan Stanford Friedmanなどによって世界文学という広い文脈の中で英文学の普遍性・特殊性が再検討される中で、Yunte HuangやNan Z. Daなどによって特に中国文学と米文学の相関関係に注目した研究も行われてきた。このような研究状況を背景に、Janet HoskinsやViet Thanh Nguyenは環太平洋地域の複数性と覇権の多重性に注目し、一部の国に研究の焦点が当てられることで、政治的・経済的力がアカデミアの研究において再生産されている状況に警鐘を鳴らす。この反省に基づき、本研究においては、東アジアにおける日英米関係のみならず、東南アジアをも視野に入れた研究を遂行することが重要となる。本研究の研究対象であるElizabeth Keithの旅行記Eastern Windowsには、彼女のフィリピン滞在時の記述も含まれる。日本を拠点にアジアを旅し、アメリカで個展を開いたイギリス人版画家の作品を分析することには、大きな意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍により海外渡航が難しい状況が続き、海外の図書館、資料館での資料収集ができないことが、研究が遅れている主な原因である。二次資料が少ない女性旅行家達を研究対象とする本研究にとって、一次資料の収集が出来ない状況において当初の研究目的に叶う研究を遂行することは、大変困難である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにオンラインで収集することの出来た一次資料の分析を引き続き行う。この際、テキスト・マイニング等の新たな分析方法にも挑戦し、研究成果、また成果発信の可能性を広げる。また、漸く海外渡航が通常に戻りつつあるので、長期休暇を利用して、当初計画していた一次資料の収集を行い、研究成果を論文としてまとめ、国際ジャーナルに投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため予定していた図書館、資料館での資料収集が出来ず、旅費を使うことがなかった。また、シカゴで開催予定であったFiMAの学会が中止になったこと、グラスゴーで開催予定であったMLA Symposiumが延期になったこと等で、国際学会出席のための旅費を使うことがなかったことが次年度使用額が生じたことの理由である。 使用計画としては、オンラインで一次資料の収集をする際の複写費用に使用すると共に、図書の購入に充てる。また、海外渡航が可能になった際の旅費として使用する。国際学会の参加費・旅費等にも使用する。
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