本研究では、植民地時代の代表的なピューリタン詩人であるエドワード・テイラーの詩と思想を環大西洋という観点から考察した。特に、テイラーの人的かつ思想的ネットワークを明らかにすることを目的に、彼の初期の詩作品を中心に分析した。 確かに、新型コロナウイルスの世界的な蔓延のために、在外研究を本年度も行うことができず、実質的に計画をしていた成果をあげることはできなかった。本研究では、印刷出版されていない資料を用いることを第一に想定していたため、在外研究ができなかった状況は研究の進展に大きな妨げとなってしまった。ただ、在外研究ができないという状況を鑑み計画を少し変更し、出版されている第一次資料を用いて研究を行った。そこでは、テイラーがハーバード大学に在籍していた時に書いた詩作品の分析をした。そして、2022年1月22日に日本アメリカ文学会東京支部にてその成果を、「エドワード・テイラーの詩作品における機織りのイメージの展開―――『最後の演説』と『家政』を中心に」というタイトルで発表した。本発表では、「最後の演説」と「家政」という詩作品における機織りの比喩を中心に分析し、テイラーの詩作品の中でこのイメージがどのように展開したのか考察した。中でも、異質なものの結合という「最後の演説」において表現された思想が、「家政」をはじめとする瞑想的な作品の中で神学的な意味合いを持つようになった点を指摘し、機織りが世俗的な内容を表す比喩から霊的な内容を表す比喩へと発展していったプロセスを明らかにした。初年度に在外研究をすることで発見したハーバード大学の学則に関する資料を用い、歴史的背景を明確に論じることができたと思う。 計画していた研究の目的を達成することができなかった点は残念だが、今後の研究の足掛かりとなる成果をあげることはできたと思われる。
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