研究課題/領域番号 |
19K13117
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
北村 紗衣 武蔵大学, 人文学部, 准教授 (00733825)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シェイクスピア / 演劇 / セクシュアリティ / ジェンダー / 美 / 観客 / 受容史 / マーケティング |
研究実績の概要 |
2019年度においては、計画書の課題1、課題2、課題3、課題4の全てを並行して少しずつ進めた。このうち、課題の1から3までについては、完遂はできなかったものの成果があった。 課題1、課題2に関しては継続途中であるが、各種文献を収集して分析することを行い、とくににおいと美の関係についての調査を行った。この成果の一部を、2019年10月にアメリカ合衆国ヴァージニア州スタントンで開催された第10回ブラックフライアーズ学会にて ‘Sweet Breath and Stinking Breath in Early Modern English Drama’というタイトルで発表した。この学会での発表は研究計画にも記載していたものである。この研究発表は、シェイクスピアの『夏の夜の夢』やローマ劇などに登場する描写と医学関連文献などの記述を結びつけ、近世イングランド演劇においては口臭のひどさが男性の性的魅力に対して非常に悪影響を与えるものとして表現されており、これは口臭が健康や雄弁に関する近世イングランド特有のさまざまな考え方と結びついているがゆえであるということを示すものであった。このアメリカ出張時には関連する史料を持っている図書館及び博物館での文献調査も行った。 課題3については2019年8月にロンドンの大英図書館をはじめとする図書館で文献調査を行った。計画書にも記載した18世紀の舞台のスターであるデイヴィッド・ギャリックに関する資料を調べ、その成果の一部を学術論文「我々にもオシァン・ジュビリー祭を!――シェイクスピア・ジュビリー祭と、とあるスコットランドのファンの夢」に生かすことができた。この論文は『Shakespeare Journal』に掲載され、2020年3月に刊行済みである。 課題4については研究書を読んだり、舞台やその映像を見たりしながら徐々に進めている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究実績概要で示したように、全ての課題を少しずつ進め、課題1-2については研究計画に記載のある、予定していた国際学会での研究発表を行った。現在はそのコメントを受けて内容を論文としてまとめる準備を行っている。課題1-2については最低でも2年はかかると見込んでいたため、予定通りに進行しているものと考えている。 課題3については一部の成果を論文として刊行した。1年で完遂することはできなかったものの、成果が出ているため、おおむね順調と考えている。課題4についても着手はしている。 このため、研究については比較的計画に沿った形で進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題については、新型コロナウイルスの流行による各学会の開催中止、図書館の閉鎖、海外渡航の停止、及び海外からの郵便物の遅着・停止に影響を受けざるを得ないため、研究については予定通りに進まないことが懸念される。国内及び国外で発表を計画していた学会が中止となったため、研究発表は予定どおりにできないと考えている。また、資料の入手が困難になったため、論文の投稿などについても相当に遅れると考えられる。 しかしながら、新型コロナウイルス流行に伴う劇場閉鎖のため世界各地の劇場がフリーで上演をオンライン配信することを始めており、資料としてはこれを使用することができるのではないかと考えている。近年の上演をアーカイヴから選んで配信しているため、課題4にかかわるものとなる予定である。本年度は計画を変更し、課題4について配信の上演をもとにした分析と、文献調査を行う予定である。
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