研究課題/領域番号 |
19K13117
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
北村 紗衣 武蔵大学, 人文学部, 准教授 (00733825)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シェイクスピア / 演劇 / セクシュアリティ / ジェンダー / 美 / 観客 / 受容史 / マーケティング |
研究実績の概要 |
本研究は、シェイクスピアをはじめとする近世イングランド演劇の上演史において男性登場人物の性的魅力や美に関する考え方はどのように変化してきたのかという問いを探求するものである。2019年度においては、計画書の課題1~4の全てを並行して少しずつ進め、課題の1から3までについては、完遂はできなかったものの成果があった。これを引き継ぎ、2020年度においては主に課題4にかかわる研究を行った。 まず、男優中心のシェイクスピア上演に関していくつか劇評の刊行や発表を行った。英語圏のシェイクスピア専門雑誌であるShakespeare Bulletinで日本のシェイクスピア上演の劇評を2本刊行した。松坂桃李主演の『ヘンリー五世』(本劇評は本科研費開始前に同じ研究課題で執筆・投稿したものである)と岡田将生主演の『ハムレット』のレビューが刊行されたが、いずれもスター男優の魅力を活用しようとする上演であった。2021年2月20日には日本シェイクスピア協会の第2回オンライン勉強会の一部として、「2010年代の史劇の映像化~『ホロウ・クラウン』と『キング』を中心に」というセッションを組織し、本研究計画に関連する「ポスト『ゲーム・オブ・スローンズ』時代のシェイクスピア史劇」という発表を行った。 この他、ファン文化に関する研究も行った。Critical Survey誌にシェイクスピア映画と日本のファン文化に関する論文を投稿したが、この論文は本研究プロジェクトの一部である女性のファン文化に関する分析を含んでいる。また、Multicultural Shakespeare誌のシェイクスピアとブラックフェイスに関する特集号に日本のシェイクスピア劇とブラックフェイスについての論文を投稿したが、この論文は人種・ジェンダー・美の問題と、それに対する観客の受け取り方の変遷について論じたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は舞台芸術映像アーカイヴなどでの調査を行う予定であった。しかしながら新型コロナウイルス感染症の流行のため、海外などに出張する調査ができず、研究の進展が遅くなった。とくにロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのアーカイヴ映像に関する調査ができなかったことは研究の進展に悪い影響があった。また、2020年度は学会も開催を手控える動きがあったため、学会発表などもあまり行うことができず、他の研究者からフィードバックをもらう機会が減少したことも研究が遅れた原因のひとつであると言える。 このため、上演のアーカイヴ配信などを中心に課題4にかかわる調査研究を行った。こちらについては劇評刊行や研究会での発表も行い、比較的すすめることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も2020年度に引き続き、新型コロナウイルスの流行による海外渡航の停止や海外からの郵便物の遅着に影響を受けざるを得ないため、研究については予定通りに進まないことを懸念している。アーカイヴ資料の利用が引き続き困難であり、論文の投稿などが遅れると考えられる。 このため、2020年度同様、無料及び有料のシェイクスピア上演オンライン配信などを利用して研究を続ける予定である。また、国際学会などはヴァーチャル開催になったため、できるかぎりそうした研究会で発表を行い、他の研究者からのフィードバックをもらって今度の研究に生かす予定である。
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