研究課題/領域番号 |
19K13122
|
研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
千葉 洋平 中京大学, 国際教養学部, 講師 (30802821)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 文学批評 / プロパガンダ / aesthetic / 教授法 / 新批評 |
研究実績の概要 |
当該年度は主に先行研究の精査と国外のアーカイブ調査を計画していた。夏季に実施したペンシルヴァニア州立大学でのKenneth Burkeに関するアーカイブを調査は、想定していた資料が見つからなかったものの、新しい視点を得るきっかけとなった点で概ね成功であったと言える。特にSigmund Freud の論文がBurkeにとって大きなインパクトを与えたという事実は、精神分析と文学批評を結びつける視点へと発展しえるだろう。 その他研究計画に沿って以下の通り研究を進めた。 1. 日本アメリカ文学会全国大会(2019年10月、於:東北学院大学)にて、シンポジウム「刻まれた断絶、忘れられた連続-プロレタリア期から冷戦を見直す」に登壇し、「冷戦西部劇と労働者階級--Charles PortisのTrue Gritにおける1930年代の痕跡」と題し研究発表を行った。冷戦初期における労働の変容を考察した上で、Portisの作品を通して文化表象を通した政治戦略の特徴を明らかにした。 2. 筑波アメリカ文学会(2019年10月、於:筑波大学)にて、研究発表「Louise ErdrichのThe Round House (2012) における法の主体」を行い、Kenneth BurkeのConstitutionの議論を援用しつつ、Erdrichの小説において法がもつ法外の要素とそれが与える主体への影響を考察した。 上記の研究発表は、「1930年代後半におけるI. A. RichardsとKenneth Burkeの知的交流と思想の発展を精査する」という当該年度の計画を経て獲得した視点を、文学作品の読解に応用したものである。さらにこれらの発表を元に、文学批評におけるaestheticの変容と社会批評の方法について精査した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. 当該年度に予定していた研究内容ののうち、1930年代のRichardsのアメリカでの活動に関わるアーカイブ調査が達成できなかった。この調査は2019年度3月に予定されていたものであったが、コロナウィルス対策によりアメリカへの移動を断念せざるをえなかった。
2. 1.と関連し、当該年度に明らかにしようとしていたBurkeとRichardsの接点に関して、結論を出すに至らなかった。
Burkeに関するアーカイブ調査は、概ね順調に進んでいると言えるのだが、3月の調査に用いるはずであった次年度繰越し金が生じた点を鑑み、やや遅れていると判断をする。またコロナウィルスの蔓延により発表を予定していた学会が延期されてしまったため、海外での人的なネットワークを構築するという目的の達成が困難となっている。国内で続けられる調査と資料の精査を通して、次年度以降の研究において、この悪条件に対応できると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度に予定していた海外での学会発表は、学会が延期されたことで、実施困難となったこと、そして現時点でも海外でのアーカイブ調査が難しい状況を鑑みると、大幅な研究計画の変更が必要となる。 1. もし夏季までに渡米が可能となった場合、まず2019年度に遂行できなかったコロンビア大学での調査に加え、実施予定であるロックフェラー財団とプリンストン大学でのアーカイブ調査を行うことで、Richardsと彼が携わっていたプロパガンダ研究のあり方を探る。 2. もし渡米が難しい場合、日本においてRichardsとBurkeに関して集められる資料を収集し、それを元に文学研究と言語教育の発展をまとめていく。2018年度に入手することでできたBurkeのアーカイブ資料をより大きなコンテクストと照らし合わせて分析していく。特に冷戦へと流れていく1947年あたりの社会状況を重点的に調査することで、Burkeの教育法にもつながる彼自身の読みの実践の特徴を明らかにする。また2021年度に扱う予定だったAesthetic(美感)に関する理論と歴史を前倒しにしてまとめることで、BurkeとRichardsを位置付ける枠組みを形成していく。 3. 2021年度に延期された学会発表に向けて発表原稿を準備しておくことで、複数の発表を短期間でこなせるようにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス蔓延により、3月に予定していた海外でのアーカイブ調査が実施不可能になったため。余った助成金は、次年度以降に未達成調査に使用する。
|