研究課題/領域番号 |
19K13125
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
佐々木 郁子 龍谷大学, 農学部, 講師 (10534125)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エコクリティシズム / イギリス・ロマン主義 / ワーズワス / 農業革命 / 持続可能性 |
研究実績の概要 |
「研究実施計画」の①~③について以下の通り実施した。 ①農業に関する歴史書や報告書から、当時の(主に湖水地方の)農業の特徴を調査する:農業改良調査会(1793-1822)発行の農業調査報告書、Arthur YoungのA Six Months Tour through the North of England(1770)およびAnnals of Agriculture(1793)を読み、湖水地方の農業が他地域より遅れつつも、近代化への過渡期にあったことを確認した。 ②エコロジーの視点を取り入れた農業論についてまとめる:Wordsworthの自然を現実逃避の場とする新歴史主義批評の読みに対して、自然をエコロジーの場とする読みがエコクリティックにより提示されたが、農業へのアプローチはほぼ手つかずの状態であり、「伝統/近代農法」という従来の二項対立的農業観が踏襲されている。James McKusickの論における伝統農法の持続可能性という観点は有意義だが、①より当農法の脆弱さが明らかとなり、農業へのエコ的アプローチには歴史的精査が不可欠であることを確認した。 ③Wordsworthによる農業関連の描写と①を比較し、農業への見解を確認し、②とどの程度結びつくのかを検討する:農業改良調査会の活動期間に執筆されたSelect Views(1810)およびThe Excursion(1814)における農業観を分析した。先行研究で指摘されてきた農業の近代化への反対ではなく、地元農業の脆弱さや小農の知識や資金の不足といった問題を直視し、教育等による解決を模索する姿勢を明らかにした。 本研究について、第25回ASLE-Japan/文学・環境学会全国大会において口頭発表を行った。発表でとりあげた農法について理解を深めるべく、農学研究者との意見交換会を行い、そこでの助言をふまえて論文を執筆・投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」に記載したイギリス・ロマン派の農業観とエコロジーに関する研究について、国内での資料収集、学会での口頭発表、文学・農学研究者との意見交換、論文の執筆・投稿を実施することができたため、「おおむね順調に進展している」と判断した。 COVID-19対策の影響で、2019年度内に予定していたイギリスでの稀覯書の閲覧や資料収集は叶わなかったが、当該年度の研究については国内で収集した資料のみで成果を残すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」に記載した③を遂行するなかで、Wordsworthは地元農業や小農の現状を危惧していた点で、農業革命推進者と通じるところがあるものの、彼らとは異なった方法での現状打開を目指していたことが明らかとなった。 そうした農業観をWordsworthはどのように構築したのか。今後はArthur Youngら農業革命を推進した農業論者だけでなく、John Thelwall(1764-1834)をはじめ、農業への造詣が深い周囲の作家の農業観へと対象を広げ、Wordsworthへの影響を研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
18-19世紀イギリスの農業関連文献や資料を国内外で閲覧・収集する予定であったが、2019年度は渡航を中止したため、旅費に次年度使用額が大幅に生じた。 渡航可能な状況になれば、イギリスでの資料収集を実施するが、それまでは国内における学会参加や大学図書館等での資料閲覧に要する旅費として使用する。
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