研究課題/領域番号 |
19K13136
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
久保田 静香 日本女子大学, 文学部, 准教授 (60774362)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | デカルト / ベルナール・ラミ / レトリック / ジャン=ジャック・ルソー / 合理主義 / ロマン主義 |
研究実績の概要 |
本研究が主に目指すところは、(1)16世紀のラムス主義者と17世紀のデカルトおよびカルテジアン(デカルト主義者)による「学芸」改革の系譜を辿ること、(2)それにより、説得術・弁論術としての古典レトリックが次第に「文彩・修辞」研究に特化されていった近代修辞学との関連を見極めることである。 2021年度は、(2)に関わる一つの研究成果として、研究報告「デカルト主義者ベルナール・ラミのレトリック理論」(フランス近世の〈知脈〉第8回研究会 2021年9月11日)を行うことができた。本報告では、a)17世紀後半に活躍した熱烈なデカルト主義者ベルナール・ラミの生涯と著作について概要をまとめ、b)ラミの主著『レトリック、または話す技法』にみられるデカルト主義的な側面を洗い出し、c)それによって『ポール=ロワイヤル論理学』(1662)の姉妹編としての性格を明るみに出し、最終的に、d)ロマン主義思想の始祖とも呼ばれるジャン=ジャック・ルソーの思想との親近性についても示唆することで、ラミのレトリック理論が西欧近代思想の両翼ともいうべき合理主義とロマン主義の狭間に位置することの意義を確認することができた。この研究報告を論文として公表することが2022年度の大きな目標である。 なお、『総合社会科学会』第34号(2022年5月刊行予定)に研究ノート「『方法序説』と『方法叙説』のあいだで―デカルトDiscours de la methodeのタイトル訳語の再検討」が掲載される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年9月に行った研究報告「デカルト主義者ベルナール・ラミのレトリック理論」を、2021年度中に論文として刊行できなかったため。年末の論文締切時期に、学内外の業務が想定以上に立て込み、余裕をもって執筆に臨めなかったことが大きい。2022年度はこれを反省材料の一つとして、年間のスケジュールを視野に入れた計画的な研究の遂行と論文の執筆を心がけ、一つ一つ着実に形にしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、2022年6月に開催予定の「京都ユダヤ思想学会学術大会シンポジウム:ルネサンス期の言語思想とユダヤ研究(仮)」にて「ペトルス・ラムスの文法改革」(仮題)と題する研究発表を行うことになっている。16世紀後半に始まるキリスト教世界でのヘブライ語文法の革新が、ラムス文法の影響を大きく受けている可能性があり、その仮説の検証に益することを目的とする。 次に、2021年9月に「フランス近世の〈知脈〉」研究会で行った研究報告「デカルト主義者ベルナール・ラミのレトリック理論」に関する論文を執筆刊行する。「早稲田大学中世・ルネサンスヨーロッパ研究所」紀要『エクフラシス』第13号(2023年3月刊行予定)に投稿予定である。 ベルナール・ラミの『レトリック、または話す術』(1675-1715)には「文彩(figures)」についてのまとまった考察がある。ラミの文彩論を整理し、18-19世紀にレトリック研究の主流となってゆくデュマルセやフォンタニエの文彩論との比較を行うための予備作業にとりかかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
二つの大きな理由がある。(1)新型コロナウイルスの収束に目途が立たず、当初計上していた「旅費」の支出がまったくできなかったこと。(2)2021年後半から年末にかけて学内外の業務が想定以上に立て込み、研究費の計画的な支出がかなわなかったこと。以上を踏まえ、2022年度の計画は下記の通りとする。(1)新型コロナウイルスの流行の完全収束はいまだ見込めず、加えて、ウクライナ情勢などの影響から国際政治経済状況も不安定となり、フランス文学・思想研究を中心とする本研究の当初の計画をどの程度まで遂行できるか不透明な状況が続いている。しかし、フランス出張は、研究遂行に必要な資料(日本には未所蔵)の閲覧・収集のためにも、たとえ数日でも可能ならば行いたい。また、(2)については年間のスケジュールを考慮のうえ、より計画的かつ効率的な支出を心がける。
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