研究課題/領域番号 |
19K13138
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
速水 淑子 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 准教授 (70826099)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジェンダー / アマゾネス / 女性戦士 / 市民社会とセクシュアリティ |
研究実績の概要 |
第三年次にあたる本年度は、以下の3点について研究を進めた。 第一は、アマゾネスの隣接イメージである女神および女性君主の表象についての文献調査である。ドイツ語圏の「ゲルマニア」に加えて、革命期フランスで政治的シンボルとしても機能した「マリアンヌ」についても検討した。 第二は、アマゾネスとおなじく「戦う女性」を扱った作品の検討である。特に、アマゾネスが主人公の『ペンテジレア』と同じ作家によって執筆された、ハインリヒ・フォン・クライスト『聖ドミンゴ島の婚約』を分析した。研究成果の一部は、2022年2月に開催された「歴史家ワークショップ」主催「史料読解ワークショップ言説篇」において、「文学テクストと歴史をどう繋ぐか:クライスト『聖ドミンゴ島の婚約』(1811)を例に考える」とのタイトルで発表し、参加者とのワークショップも行った。 本研究の広義の目的は、「市民社会」の理念が持つ排除と抑圧の契機を、特にジェンダーとセクシュアリティをめぐる言説に注目しつつその形成期に遡って明らかにし、それによって現代における「市民社会」理念の限界と可能性を考察することである。その観点から、20世紀初頭の小説、トーマス・マン『ヴェニスに死す』における、性・欲望・秩序の関連および19世紀の哲学者ニーチェからの影響について、後年のマンのナチズム理解と照らしつつ(2019年の口頭発表を土台として)検討を行った。成果は、論文 Ein >um 20 Jahre vorweggenommene[r];Nationalsozialismus<? Nietzsche-Rezeption im Tod in Venedig und ihre Entwicklung in den dreissiger Jahren(20 年前に先取りされた『国民社会主義』」?――『ヴェニスに死す』におけるニーチェ受容と1930 年代におけるその展開)にまとめ、論文集の共著出版にむけて編集作業途中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は本来、3か年計画の最終年度にあたり、これまでの成果のとりまとめを行う予定であった。しかし、感染症の流行によって、予定していた海外での調査(特に女性戦士の視覚イメージに関する調査)を行うことができず、計画を後ろ倒しせざるをえなかった。一方で、当初は予定していなかったマン『ヴェニスに死す』を扱ったことで、研究の広義の目的である18/19世紀転換期ドイツ語圏における市民社会のジェンダーの関係、近代ドイツ語圏における市民社会とセクシュアリティの関係の解明を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、アマゾネスの隣接イメージの調査を続ける。特に女神ゲルマニアについて文献の読み込みを行う。また、感染症拡大により実施できなかった欧州での資料収集および視覚イメージ調査を実施したい。 2)次年度は延長後の最終年度にあたるため、研究成果を総括し、ナショナリズム、ジェンダー、野蛮概念の三者の関係について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症拡大により、予定していたヨーロッパでの調査ができなかった。次年度は、調査渡航と文献収集のために残額を使用する。
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