研究課題/領域番号 |
19K13142
|
研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
BRUNA LUKAS 実践女子大学, 文学部, 准教授 (10780827)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | エリアーショヴァー / チェコ文学 / ジャポニズム / ジャポニズム小説 / 旅行記 / 女性運動 / 異文化交流 / 日本近代文学 |
研究実績の概要 |
2021年度は、エリアーショヴァーの日本滞在中の動向や交流内容をめぐる調査を継続すると同時に、教員時代のエリアーショヴァーのチェコの女性解放運動との関わりや彼女の教育思想の形成にも注目した。さらにエリアーショヴァーを中心とした研究を押しひろげ、日本文化に触発された近代チェコの〈ジャポニズム文学〉に焦点を当てた。対面実施が困難な状況が続くなかでも複数のイベントを企画し、本研究の成果を幅広く発信できた。以下その要点を要約した。 ① 小論「〈日本もの〉の系譜──ロティの『お菊さん』からツィマの『シブヤで目覚めて』まで」(『図書新聞』)では、戦争プロパガンダとの関係にも触れつつ〈ジャポニズム文学〉の諸問題を論じ、近代チェコにおけるこのジャンルの歴史を紹介した。 ② 5月15日に作家A・ツィマを招き、小説『シブヤで目覚めて』をめぐるトーク・イベントを開催し、Youtubeでライブ配信した。 ③ 12月16日にオンライン・シンポジウム「チェコスロヴァキアの女性解放運動」を開催した。研究代表者は「旅行家エリアーショヴァーと日本/チェコの女性運動──女学校講師時代の思想形成を中心に」というタイトルで口頭発表を行い、教員時代のエリアーショヴァーの経験が彼女の日本観にどのような影響を与えたかを明らかにした。関連イベントとして近代チェコの女性参政権運動をテーマにした展示(マサリク研究所・東京外国語大学チェコ語課共催)を企画した。 ④ 2022年2月15日~3月31日に、チェコセンター東京にて展示「夢うつつの世界へ──近代チェコ文学に描かれる〈日本〉」を開催し、チェコのジャポニズム文学の歴史を、日本で初めて紹介した。これに関連して3月12日にオンライン・シンポジウム「近代チェコ文学の日本」を開催した。 ⑤ FBにてエリアーショヴァーのページを開設し、エリアーショヴァー関連の情報を継続的に発信した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連資料の収集・調査を目的とした海外出張および研究施設の利用は現在にもままならない状況がつづいていくなか、調査方法を必要に応じて変更しつつ研究を進め、当初の研究計画書に想定されていたと同レベルの研究成果を挙げることができた。 本研究の基盤となるエリアーショヴァーの関連資料の調査は、2020年に新型コロナウィルス感染症の拡大のため事実上停止状態となったが、2021年度に現地調査を再開でき、プラハのナープルステック博物館でエリアーショヴァーの日記や書簡、それからエリアーショヴァーはその著書や講演の際に使用した写真(関東大震災のものをふくむ)の調査を行った。 個人の研究成果としてはエッセー2点、研究発表2回がある。そのほかに、ジャポニズム文学をテーマにした展示を企画し、オンライン・イベントを三つ開催した。教室借用や対面実施に関しては感染予防の一環として様々な制限が設けられているため、昨年度と同様にオンライン開催に変更したが、その結果、遠隔地や海外からの多くの参加者を集めることができた。 学生・一般への近現代ジャポニズム文学の長期間の継続的な紹介を目的とし、2021年に本務校の実践女子大学国文学科にて特別講演会「世界文学とジャポニズム」のシリーズを新しく設定し、その第一回としては「渋谷からシブヤへ」を開催した。本イベントは緊急事態宣言発出中に実施されることになったため、Youtubeでのライブ配信を行い、瞬間最高視聴者数は250名に達した。国際シンポジウム「チェコスロヴァキアの女性解放運動」と「近代チェコ文学の日本」はZOOMによるオンライン開催にし、英語での講演および研究発表は、ZOOMの「通訳」機能を使用し、日本語への同時通訳を行った。このように様々なツールを駆使し、参加人数を確保することができた。 上記を踏まえて本研究の現在までの進捗状況についてはおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2022年度においては、多少の修正を加えながらもおおむね当初の計画にそってエリアーショヴァーおよびチェコのジャポニズム文学に関する調査を進め、研究成果の公開を行う。 現地調査は、新型コロナウィルス感染症拡大のため当初の予定より遅れているため、2022年の夏期は、プラハのナープルステック博物館をはじめ複数の研究施設にて、これまで未確認の資料の調査を行う。文献調査のほかに、エリアーショヴァーの生まれ故郷のイジーコヴィツェ村や青年期を過ごしたブルノ市での現地調査を行う予定もある。 最終年度に親日家であったエリアーショヴァーの旅行と同時代の日本の文化人・知識人との交流をテーマにした展示「B・M・エリアーショヴァーと日本」(仮名)をナープルステック博物館および駐日チェコ共和国大使館のチェコセンター東京との共催で構想していたが、ナープルステック博物館の内部事情により所蔵品の海外への貸与は困難となったため、本展示をパネル展示として実施することに変更し、会場も、チェコセンター東京の展示室ではなく、複数の国内大学(東京外国語大学、実践女子大学その他、現在交渉中)で、学生の目に触れるスペースに設置して展示を行うことを予定している。これにより従来の展示とは異なる観客層を獲得し、エリアーショヴァーの認知度を高めることができると期待できる。ほかに、チェコの女性旅行家たちに関するオンライン・シンポジウムと、エリアーショヴァーと同じく20世紀前半に来日した女性旅行家A・カルリンやA・シャーレクに関するオンライン・シンポジウムの開催を予定している。 本研究の集大成となる単著『B・M・エリアーショヴァーと日本』(仮名、2023年刊行予定)の刊行に向けて、従来の調査および研究成果の論文化をつづけるほか、2020年度に開催された展示「チェコと日本を結ぶ文学」の報告書の印刷を予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大のため海外調査は予定通りに進めることができなかったため次年度使用額が生じた。2022年度の海外出張の旅費および調査費に充てることを予定している。
|
備考 |
チェコの旅行家・作家・翻訳家B・M・エリアーショヴァーに関する情報をチェコ語で発信する目的で2022年1月に立ち上げたFBのページである。
|