研究課題/領域番号 |
19K13143
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研究機関 | 白百合女子大学 |
研究代表者 |
村中 由美子 白百合女子大学, 文学部, 講師 (40791174)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジェンダー / 戦間期フランス文学 |
研究実績の概要 |
「戦間期フランス文学におけるジェンダー観の揺らぎと女性作家の社会的スタンス」と題された本研究は、マルグリット・ユルスナール、クロード・カーアン、ヴァージニア・ウルフらの作品のなかに読み取れる新しいジェンダー観を抽出しようとするものである。今年度はとくに、アーサー・ウェイリー訳『源氏物語』を読むユルスナールとウルフについての比較研究を行なった。具体的には、<ウェイリー源氏>を読んだ両作家が、みずからの芸術観を展開する際、ジェンダーの概念についても触れていることに着目した。『源氏物語』第2帖「帚木」のなかの「雨夜の品定め」において、真の芸術家についての議論が展開されているが、この部分の訳において、ウェイリーは原文にはない「日常の物事を美しく描くことに真の芸術家の価値がある」というアーツ・アンド・クラフツ運動を彷彿とさせる内容を盛り込んでいる。その部分を高く評価したウルフの書評と、ユルスナールによる『源氏物語』の翻案「源氏の君の最後の恋」を対照させることで、ウルフとユルスナールに共通する芸術家像を読み取った。そこから、どう2人のジェンダー観につながっていくのかという問題については、今後の課題とする。 なお、以上の内容は、2019年9月に筑波大学で行なわれた第3回EAJS(ヨーロッパ日本研究協会)日本国際会議で口頭発表した。英文学、国文学を専門とする研究者とパネルを組んで発表したため、広い視野において自分の研究を考え直すとてもよいきっかけになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大のため、3月に予定していたフランスでの資料調査を行なうことができなかった。状況の収束が見通せないため、当面は国内で入手できる文献を中心に研究を行なうよう早急に計画を立て直す予定である。 各種研究会についても延期や中止が相次いでいるが、個人で進められる研究を次年度は着実に行なっていく。
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今後の研究の推進方策 |
初年度にあまり読み込めなかったクロード・カーアンの作品を読み込んでいく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していた海外での資料調査を行なわなかったため、差額が残っている。差額は、次年度の資料調査の旅費、書籍購入費として使用予定。
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備考 |
国際日本文化研究センターの広報誌『日文研』第64号に寄せた、稲賀繁美氏の共同研究会への参加レポート。
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