研究課題/領域番号 |
19K13143
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研究機関 | 白百合女子大学 |
研究代表者 |
村中 由美子 白百合女子大学, 文学部, 准教授 (40791174)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マルグリット・ユルスナール / 庭 |
研究実績の概要 |
2022年度は、ジェンダーのテーマから派生したマルグリット・ユルスナールにおける庭のテーマについて、さらに発展させることができた。ユルスナールによる庭をめぐるエッセイは、1982年にこの作家が実際に訪れた京都の寺社庭園に関して綴った文章にもつながり、その文章には西洋の庭を描いたフランドル絵画の考察も含まれることで、これらテクストは比較文化の様相もはらむことがわかった。庭というモチーフに着目することで、ユルスナールの東洋思想への関心について考察する足がかりとなり、それはこの作家とその時代におけるジェンダーの問題を考える上で非常に有効であると考えられる。 ポーランド(トルン)で2022年10月に開催されたマルグリット・ユルスナール研究会(SIEY)による国際学会『マルグリット・ユルスナールと世界についての危惧』において、この研究成果について世界のユルスナール研究者たちに発表することができ、さまざまな反響を得た。とくに、庭というモチーフを扱う場合、やはりヴォルテールの『カンディード』の意味と重要性は無視できないものであり、それを経由することで、よりユルスナールにおける庭のテーマを発展させられる可能性が見込めることがわかった。それを基に、今後さらに研究を進める予定である。 研究期間を延長したため、2023年度は本研究の最終年度となる。庭のテーマを経由することで収穫はあったが、元々の研究対象である戦間期から離れてきてしまったため、最終年度においては再び戦間期におけるユルスナールの書簡や同時代の雑誌等の研究を進め、ユルスナール自身の創作の歩みと時代の潮流の双方から、当時におけるジェンダーに対する考え方、小説や映画等での表現のされ方を追究していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染症拡大により、2022年度はまだ海外での研究調査を行いにくい状況であり、当初予定していた、フランス国立図書館やアメリカでのユルスナールの草稿の研究がまったくできなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
感染症の状況は改善してきたとはいえ、以前のように海外で自由に研究調査ができる環境に戻るかどうかはまだ不確実である。最終年度である今年度、確実に研究結果をまとめるためには、場合によっては海外での資料調査に頼るよりも日本で入手できる文献を基に研究を進める方向に切り替えるほうがよいかもしれないと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、予定していた海外での研究調査が行なえず、旅費等の出費がなかったためである。今年度は、状況が許せばフランス、アメリカでの資料調査に研究費を使用し、そうでなければ国際学会に参加する旅費・滞在費や研究発表経費として使用する予定である。
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