研究課題/領域番号 |
19K13149
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
白戸 満喜子 実践女子大学, 研究推進機構, 研究員 (50814042)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非破壊検査 / 料紙 / 料紙観察 / 和紙 / 紙の原料 / 植物繊維 / 竹紙 / 製紙技術 |
研究実績の概要 |
本研究では、主として印刷・出版物に使用された紙(料紙)について、1.紙の原料となる植物繊維、2.印刷適性などの機能を向上させるために添加された填料、3.紙質向上や装飾のために施された加工、以上3点を明らかにする料紙観察という方法について、2022年度は以下の調査研究を実施した。 1:2021年度に引き続き研究の主眼である汎用的手法を試行するため、設置場所を必要とする顕微鏡ではなく、携帯可能な固定倍率のルーペでの料紙観察を実施した。 2:研究対象を日本の料紙だけではなく、中国で生産された竹紙へと範囲を広げた。具体的には、中国の復旦大学文物与博物館学系教授である陳剛氏への協力として、和古書や明治期に日本人が調査した竹紙の製作技術書の翻字を提供した。 3:本研究の成果を公刊するにあたり、引き続き必要な画像撮影を行った。 COVID-19の影響により、本研究は当初予定から方針を変更しつつ、想定外の成果が得られる方向にある。上記2における研究協力は、陳剛氏の著書『中国手工竹紙制作技芸』を研究代表者が全冊翻訳することとなり、現在、研究代表者による翻訳作業が進んでいる。『中国手工竹紙制作技芸』は、中国における竹を原料とした紙の生産地を可能な限り現地調査し、さらに科学的分析を試みた著作であり、中国国内の紙研究者間で高く評価されている。また、文献資料と料紙の繊維観察という点で、本研究と共通点がある。中国の竹紙に関する日本語の専門書は現在日本国内では公刊されておらず、本書の刊行をもって初の日本語竹紙資料となる。日本への竹紙流入は書物だけではなく、書道や絵画なども含まれており、当該書の公刊意義は大きく、2023年度内に刊行予定である。研究期間延長となった2023年度は、これまでの本研究の内容に基づき、2022年度に刊行予定であったが出版社の状況により延期となっていた料紙観察入門書を刊行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は当初日本の料紙を研究対象としていたが、中国で生産された竹紙へと範囲を広げた。COVID-19の影響により、国内での研究活動は変更を余儀なくされたが、インターネットを通じての会議参加や研究情報の相互提供により、想定外の成果が得られる方向に向かっている。中国・復旦大学の陳剛『中国手工竹紙制作技芸』は、中国における竹を原料とした紙の専門書であり、現在当該書の全冊翻訳を研究代表者が担当している。これまで日本語版がなかった竹紙の専門書を日本語で公刊する意義は大きい。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、陳剛『中国手工竹紙制作技芸』の翻訳書を科学技術出版社東京より刊行し、順延となっていた料紙観察入門書を文学通信より刊行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、当初予定していた調査に係る旅費および調査協力者への謝金を執行することができなかった。次年度は研究成果を公刊する予定があり、その内容について専門分野の有識者による確認(校閲)を実施する予定である。
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