研究課題/領域番号 |
19K13157
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
高嶋 由布子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 流動研究員 (40792271)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本手話 / 記述言語学 / 危機言語 / 映像 / アノテーション / アーカイブ / 語彙 / 辞書 |
研究実績の概要 |
本研究は、消滅危機言語としての日本手話の記録・保存のための基本となる辞書・文法・談話作成のモデルケースを創出するのが目的である。研究2年次である本年度は、代表者の異動により新たな研究環境になり、倫理審査を新たに受け、調査方法のアップデート、個人情報取り扱いについての調整を行った。新型感染症拡大下にて対面での調査・撮影が予定より大幅に減った。感染症拡大が緩んでいた時期に、限られた人数での調査を実施した。 語彙調査は、調査時の細かい話し合い活動が少ないので、感染症拡大下でも比較的撮影がやりやすく、優先して進めた。本研究では基本語彙200語の取得を目標としていたが、800語程度の撮影を行うことができた。このアノテーションを実施し、手型・位置の一次コーディングを完了した。これをもとに、ネイティブサイナーの確認作業と音韻にかんする論文の執筆に取りかかることができた。 一方で、文法調査と談話撮影は、感染症拡大下では対面での実施は難しく、本年度は実施できなかった。この調査についてはオンラインに切り替えて進めるための打ち合わせを行った。 文法調査は行えなかったが、昨年度に撮った形容詞・動詞のアノテーションを標準化し、property concept叙述の分析を開始し、必要な追加調査をリスト化した。 談話については初年度に撮影した3本の資料すべてのアノテーションが終わり、翻訳の確認作業を行い、公開の準備を進めている。これも、対面での確認作業の実施を予定していたが、感染症拡大下では難しかったので、保留になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大下では、対面での調査を予定していた回数・人数で実施できなかった。手話のデータは顔の動きまでが文法の情報を含むため、マスクをつけた状態での撮影では、本来の目的である、映像付きの資料の作成が達成できないため、緊急事態宣言が出ていない時期に2回対面にて調査を行った。調査対象者であるろう者は、ともすると情報弱者になってしまうため、人一倍気を遣って生活をしていることから、十分な距離がとれる部屋で感染対策を十分にした調査でも、心理的負担は大きく、調査を決行しにくかった。一方で、顔の映像という個人情報を取り扱う調査のため、対面での心理的安全性を元に進めてきた調査でもあるため、オンラインへの移行は難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
感染症拡大の勢いは弱まらず、今年度も対面での調査はしにくいとみて、打ち合わせを重ね、新たにオンライン調査を実施する予定である。必要な質の映像を得るために、オンライン会議システムに並行してビデオカメラを送付して自身で撮影してもらうという対応で、対面と同等のクオリティの手話映像が得られるかも模索する予定である。ただし、保存という観点ではやはり対面でのデータが良いと思われるため、まずは記述文法のための調査をオンラインにて進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、見積もっていた被験者謝金のかなりの割合が使えなかったため。
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