a本年度は、アラビア語クレオールとその基層言語(バリ語、ナイルサハラ語族)について国際学会発表および国内外でのフィールドワークを行い、これまでの成果をとりまとめた。 2023年8月にはケニア・ナイロビで開催された第16回ナイルサハラ言語学コロキアムにて、バリ語における情報構造や構成性が関わる動詞形態統語論的交替(conjoint/disjoint)とその共時・通時言語学的解釈に関する口頭発表を行った。この研究ではアフリカ言語学の最新のトピックについての稀少な事例研究であるだけでなく、アラビア語クレオールの基層言語が極めて複雑な形態論的交替をもつことを世界で初めて明らかにした。同年9月には引き続きナイロビにてヌビ語の言語調査を行い、イスラーム説話の対訳データを収集した。本データは本研究課題の主眼である語彙研究に資するのみならず、文法研究のためのコーパスとしても、母語教材作成としても利用可能である。同年7~8月には大阪にてジュバ・アラビア語およびバリ語の基礎語彙、動詞使役・非使役交替などの文法現象および対訳テクスト作成などの調査を行った(関連する研究課題により2024年2~3月にも同調査を継続)。この他、2023年度には本研究課題の成果を部分的に含む、アラビア語・ナイルサハラ語族・バンガラ語・ピジン/クレオールに関する論文・その他記事11件、国内研究発表3回の業績が得られた。 以上をもって、本研究課題では、既に出版された論文等のほか、ヌビ語、ジュバ・アラビア語、バリ語3言語の対訳テクスト・語彙・文法注釈、見出し語としては1500語程度(派生語を除く)の文法情報つきヌビ語語彙集、ヌビ語・バリ語による説話資料などのデータベースを、今後種々の研究に利用可能な形で整備した。これらの資料の一部はウェブページにて既に公開済みであるが、引き続き順次これらの資料を完成された形で公開する予定である。
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