研究課題/領域番号 |
19K13161
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研究機関 | 九州国際大学 |
研究代表者 |
木戸 康人 九州国際大学, 現代ビジネス学部, 准教授 (30800841)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 複合動詞 / 促音 / 撥音 / 接辞 / 接中辞 / 指小辞 / 慣習的推意 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本語を獲得中の幼児がいつ、どのようにして複合動詞を獲得しているのかを明らかにすることが目的である。その目的を達成するために、CHILDESを用いた発話調査と心理実験を行う予定であった。しかし、コロナ禍により心理実験は行うことが困難となったため、CHILDESを用いた発話調査を重点的に行った。具体的には以下の2点である。 1.今年度はなぜ成人が促音を含む複合動詞を月齢が低い幼児に対して使う傾向が観察されるのか、また、なぜ幼児が最初に発話する複合動詞には促音が含まれているのか、という2つの問いを明らかにすることを目的として研究を行った。その結果、幼児の月齢が低ければ低いほど、成人は前部要素に特殊拍を含むという幼児語の音韻的な特徴を有した複合動詞を使っていたこと、また、日本語を獲得中の幼児が複合動詞を獲得するとき、幼児が最初に発話する複合動詞は前項動詞に促音を含んだものという共通点があったことを報告した。 上に記した調査については、Studies in Language Sciencesに査読付き論文として受理された。
2.CHILDESの使い方を周知するべく、チュートリアルを関西心理言語研究会、長崎大学、中央大学で行った。具体的には、CHILDESをインターネット上で使用可能なBrowsable Databaseに焦点を置き、その使い方をオンライン(Zoom)で指導した。特に、過剰生成や過小生成されたものの調べ方や正規表現を組み合わせた調べ方、ディペンデントティアの調べ方を重点的に紹介した。 本チュートリアルで紹介した内容は本のチャプターとして掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はCHILDESを使用した発話分析と理論研究を行った。その結果、当初考えていた心理実験は、コロナ禍ゆえ、保育園や幼稚園に行くことが困難となったためできなかったけれども、発話分析と理論研究は研究の実績にも書いたように順調に進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
成人が子どもに語りかけるとき、前項動詞が促音便化した複合動詞を使うことを発話分析をもとに提案した。その提案が正しいかどうかを検証する必要がある。具体的には、相手が大人か子どもかによって、「くっつく」と「つく」であればどちらを使うか、というアンケート調査を大人に対して行う予定である。
日本語複合動詞には、引っ張る<引き張る、ぶっ壊す<打ち壊す などのように、前項動詞が促音便化するものがある。しかし、これとは別に類似したものとして、「落っこちる」や「落っことす」がある。これらは複合動詞ではなく、「落ちる」「落とす」の語中に「っこ」という接中辞が挿入されているものだと分析した。また、この「っこ」は①語彙化したもの(鍵っ子、現代っ子など)と②指小辞としてのもの(隅っこ、端っこ、できっこない、落っこちる、よっこいしょなど)と③「ごっこ」を語源とするもの(にらめっこ、追いかけっこなど)があると提案し、②と③については、それぞれ異なった慣習的推意が導入されることを記述する。上に記した研究は、日本言語学会第164回のワークショップで口頭発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は引き続き研究を続ける予定である。その際、必要な図書の購入が必要である。また、研究成果を学会で発表するために、学会参加費が必要である。同時に、2021年度後半から徐々に海外では現地開催に戻す動きが見られているため、学会に参加するための渡航費も必要になってくると考えられる。
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