研究実績の概要 |
本研究では、3つのことを行った。第一に、「複合動詞の獲得」と「CHILDES」についての概説コラムを執筆したことである。これまで研究してきたように、日本語母語児がいつ、どのような複合動詞を発話するのかを観察したことや2023年時点で検証されてきた研究成果について概説した。また、CHILDESについてもCHILDESの使い方だけでなく、2023年時点でCHILDESの発展版であるCHILDES-dbなどについても紹介した。このような2つのコラムは『言語理論・言語獲得理論から見たキータームと名著解題』68-69,86-87, 東京, 開拓社. ISBN: 9784758923828.に収録されている。 第二に、Studies in Language Sciences: Journal of the Japanese Society for Language Sciences, 21(2), 1-14.のジャーナルに「CHILDESの展望と統語的複合動詞の獲得」というタイトルの論文を投稿したことである。本稿では、なぜ日本語複合動詞の獲得には一定の発現順序があるのか、という問いに対して、幼児語の特徴が関係している可能性があること、日本語複合動詞を獲得するためには、連用形の獲得が十分条件であることなどを明らかにした。 第三に、「引っこ抜く」「落っこちる」「落っことす」で観察される接辞「っこ」の多義性について、論文を執筆した。複合動詞「引っこ抜く」の中に現れる「っこ」がなぜ挿入されているのか、この問いを明らかにするために、「っこ」が関係するデータを集め、日本語には5つの「っこ」があると述べた。
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