本研究は訓点資料と呼ばれる古典籍を対象とし情報工学的アプローチから訓点の特性を明らかにすることを目的としている。訓点研究を行う研究者間でコンピュータを用いた情報共有を容易にし、ヲコト点の体系的研究の展開を図ることを、本研究では目標としている。最終年度を含む研究期間において、以下の3点を実現し、電子化したデータに基づく訓点研究の促進に貢献できた。(1)実在する訓点資料から帰納した点図の電子化(2)点図と関連する書誌情報を連携するためのデータベース基盤の整備(3)訓点研究者が作成した点図を公開・共有するためのプラットフォームの整備 (1)については、実在する訓点資料に基づいて作成された点図を電子化した。 (2)については、(1)で電子化したデータを検索するデータベース基盤を整備した。 (3)については、データベースに入れる訓点情報の整備、点図入力アプリケーションの実装、訓点データベースからデータを取得するためのWebAPI、ヲコト点図の比較アプリケーションなどを設計実装した。(2)、(3)の成果の一部は国立国語研究所のWebページ内に公開されている。これにより、研究者が作成した点図を、これまでの研究成果として作られている点図と比較検討することが容易になった。 これらの成果により、計算機を用いて点図の種類を自動的に分類する方式の検討やこれまで研究対象としては注目されていなかったヲコト点についてなんらかの関係があると考えられるデータを抽出することができた。研究成果は主に、人文科学とコンピュータシンポジウムや、情報処理学会論文誌の「人文科学とコンピュータ」特集号に投稿、発表を行った。2022年刊行の人文科学とコンピュータ特集号では、本研究の成果をまとめた論文が特選論文に選出された。
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