本研究は、ヒトが言語音を知覚する際、その音声を子音や母音などの音素として認識する場合と同一音素内で異なる音声として知覚する場合で、脳波にどのような変化が生じるのか明確化することを目的としている。音素として認識するための条件や異なる音声として知覚するための条件の下、言語音を知覚している際の脳波を採取し、分析を行った。その結果、それぞれの条件において表れる脳波の振幅やタイミングが異なることがわかった。 最終年度となる2023年度には上記結果の分析を行い、その結果を国際学会で発表し、また国際ジャーナルへ投稿するための論文を執筆した。分析方法を精査するため、本研究を国際共同研究へと発展させ、共同研究者と議論を重ねながら分析を行った。また、抽出された脳波を解釈するため、国際学会のみならず米国内の大学で講演を行うことで他の研究者からの意見を集約し、音声学、音韻論、認知神経科学等、多様な先行研究を扱いながら論文の執筆を行った。 本研究の成果では、音声の弁別を表す脳波成分の振幅とタイミングが条件毎に異なると結論付けているが、今後の研究では、各条件下において抽出された脳波成分自体が異なるか否か、検証する必要がある。そうすることで、脳がどのように言語音の記憶を蓄積し、処理しているのか、その謎の解明に貢献する。本研究課題は2023年度で終了となるが、今後は本研究をさらに発展させ、ヒトによる言語音知覚のプロセスを紐解いていく。
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