研究課題/領域番号 |
19K13170
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
大塚 生子 大阪工業大学, 工学部, 講師 (80759027)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イン/ポライトネス / 周縁化 / 対立 / ヘイトスピーチ / 品行 |
研究実績の概要 |
1. 「日常会話における差別の(再)生産について―ヘイトスピーチ(差別的談話)をミクロレベルで考える―」(『大阪工業大学紀要』Vol. 64, No. 2, 37-52.):特定のアイデンティティを有する者への差別的談話を「ヘイトスピーチ」と捉え、友人間会話(高齢男性友人間・ママ友間)における、第三者を「周縁化」するストラテジーを考察した。 2. "Analyzing Im/Politeness Strategies in Conflictive Message Exchanges between Fellow Moms in Japan: Emotion and Demeanor"(14th International Pragmatics Conference):日本のママ友間の対立的メール交換でのイン/ポライトネス・ストラテジー分析、彼女らの振る舞いにかかる感情と品行との対立を考察した。 3. "A caste system to divide fellow-moms in Japan: Ideology and relational work"(14th International Pragmatics Conference):日本におけるママ友関係構築が、いわゆる「カースト」による分断に類似している点を指摘し、イデオロギーとリレイショナル・ワークの観点から彼女らのコミュニケーションを論じた。 4. "The Interactional Function of “yaru” in Kansai Dialect"(1st East Asian Pragmatics Symposium):関西方言の「~やる」という文末表現がママ友間で対人関係距離の交渉に用いられていることに着目,談話分析に基づき相互行為上の機能を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、「日常のコミュニケーションにおける周縁化」をテーマとし、談話において集団内の協調を乱す「対立」がいかに扱われ、その発話・フレーム、あるいは「罪を犯した」個人がどのように扱われるかを、ママ友間の会話の談話分析を通して考察することを目的としている。初年度・2019年度にはその基盤となる既述の研究を実施、公表した。 先行研究についても学会において専門分野の最新の研究に触れることができたことをはじめ、関連諸分野の重要研究を省察してきた。 ママ友間会話の収集については新型コロナの影響により、予定より大幅に遅れが生じているため、現段階は既収のものの分析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
相手との良好な人間関係の維持のためのストラテジーが、「差別を行うべきではない」という一般的な社会規範に選好されることを明らかにした拙論、「日常会話における差別の(再)生産について―ヘイトスピーチ(差別的談話)をミクロレベルで考える―」により、ママ友関係を含めた人間関係における他者の周縁化が、コミュニケーションにおいて、人々のより実質的な利害への傾倒により作り上げられるというイン/ポライトネス研究への大きな問いを投げかけることができた。この観点を本課題の中心的課題のひとつとして,今後展開させていくつもりである。 新型コロナの影響で新たなデータ収集が困難な状況であるため、状況が改善するまでは先行研究の調査を中心に進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
会話データの収集が計画通りに進まなかったため、次年度にこれに伴う謝金・人件費として使用する。
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