研究課題/領域番号 |
19K13172
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
鈴木 彩香 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論・対照研究領域, プロジェクトPDフェロー (80813386)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ル形 / テイル形 / 状態動詞 / 第四種動詞 / トキ節 / 難易文 / 可能文 / 写像仮説 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまで事象叙述文を中心に考えられてきたテンス・アスペクト体系の中に、属性叙述文におけるアスペクト形式の対立を位置づけることを目的としている。 本年度は、考察の範囲を広げ、当初予定していなかった現象も扱うことで、より発展的・精密な体系を構築することに注力した。具体的には、以下の3点の成果を挙げた。 ①いずれも属性叙述の中に現れるアスペクト対立と見ることができる感覚を表すオノマトペ動詞のル形とテイル形の対立に焦点を当て、状態的な意味を表す両者がどのようなアスペクト対立をなしているのかを明らかにした。本研究の成果は、2020年に出版された論文集『TAMEに関する多言語研究と認知モード』内の論文「状態動詞におけるル形とテイル形の対立―感覚を表すオノマトペ動詞を例に―」として発表済みである。 ②成立不可能なトキ節に焦点を当て、なぜ成立不可能となるのかを論じることによって、事象叙述におけるル形とテイル形の意味記述を行った。本研究の成果は、2020年に行われた日本語文法学会第21回大会における発表「同時性に基づくトキ節の統一的分析」として発表済みである。 ③難易文・可能文といった属性叙述文に現れる名詞句の解釈の考察を通して、写像仮説を再考する記述的根拠を論じた。写像仮説は、名詞句の解釈に文のテンスが関与することを論じるものであり、属性叙述文の成立にテンスがどのように関与するかを明らかにする上で重要な意味を持つ。本研究の成果は、2020年に出版された論文集『文法・語形成における名詞の役割』内の論文「難易文・可能文における裸名詞句の解釈と統語構造」として発表済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた習慣相のテイルに関する分析は行うことができず、次年度に行うことを計画しているが、予定していたよりも考察の範囲を広げることができ、より発展的で精密な議論を行うことが可能になったため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
習慣相のテイルの分析に関しては、次年度に出版予定の単著「属性叙述と総称性」の中で行うことを予定している。また、本年度明らかになった成果についても、事象叙述と属性叙述の双方でル形やテイル形の形式的な意味記述を行い、3年目から5年目にかけて体系的な整理につなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症対策のため、多くの学会がオンライン開催となり、旅費として計上していた予算のほとんどが未使用となったため。学会のオンライン開催は、次年度以降も続くものと考えられるため、オンラインでの発表・聴講が快適に行えるよう、PC周辺機器に予算を使用する予定である。
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